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「どうするんです?樋口伯爵からの話お受けするんですか?」 高木が紅茶を淹れながら尋ねた。 「まあ、断っても大丈夫だとは思うけど、樋口伯爵夫人の実家とは仕事で付き合いがあるし、引き受けることにするよ。」 「そうですか。」 三年前に始めた貿易商の仕事は上手く行っている。 元は母方の実家が始めた事業で、学生の内から手伝いをしていたらなかなか筋が良いということで、そのまま働き始めた。 ロンドンへの留学経験も生かす事が出来るし、自分でも向いていると思う。 ところで、光治君は語学力はどれ程あるのだろうか? まあ、短期間しかいない訳だし、大した仕事を任せることはないだろうから、そこは懸念する必要はないか。 僕は机の引き出しから便箋を取り出し、伯爵宛に快諾の旨を伝える手紙を書いた。

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