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第14話
「シュンさん、生まれ変わったら、俺、必ず貴方を見つけます。だからその時は、俺のものになってください」
シュンの濡れた瞳を見ているうちに、そんな事を口にしていた。いつもの俺だったら、相手がどんなに素敵な女性だとしても、そんなこと言わないだろう。まだ、恋愛経験は殆どないんだけれど……。
でも、その時の俺は、そんなセリフを言ってしまうほど、シュンに傍に居て欲しいと思っていた。
「また2人とも男でも?」 シュンが困ったように笑いながら言った。
「かまいません。そんな事」
「じゃあ、2人とも女だったら?」
「それでも、いいです」
「俺が犬で、鷹人君が人間だったら?」
俺はもう一度に近寄って、シュンの髪を優しく撫ぜた。
「絶対見つけて、家で一緒に暮らします。一生面倒みますよ」
「じゃあ、俺が死にそうな年寄りで、君は若かったら?」
シュンの指が俺の額をツンと押した。
「貴方が息を引き取るまで、傍についています」
シュンが一瞬泣きそうな顔をした。
「じゃあ、俺が人間で、鷹人が猫だったら?」
「貴方を見つけて、家に住みつきます。捨てないで下さい」
俺は、クスッと笑ったシュンの唇を指でなぞった。
「なら、俺が石ころだったら?」
「必ず見つけ出して、綺麗に磨いて飾っておきます」
「飾っとくだけ?」
シュンが両手で俺の頬を包み込んだ。
「じゃあ、お守りにして、いつも身に付けておきます」
少し背伸びをしたシュンが、俺の唇にキスをした。俺はシュンの体をギュッと抱きしめた。
口付けの後、シュンが頭を振りながら呟いた。
「鷹人君、君はすごい詩人なんだね……俺、クラッとしちゃったじゃないか」
「いえ、こんな事いつもの俺は絶対言いません。ただ、シュンさんにメチャクチャ惚れてしまったんです」
そこまで言って、俺はハタと我に返った。
「えっと……それじゃあ……」
考えなしの自分の行動に戸惑い始めた俺は、そそくさと隣の部屋に絵を取りに行こうとした。
「あのさ、コーヒー飲みたいんだけど」
すぐ帰ると思っていたシュンがそう言いだした。相手が女性だったら、この流れでそのままなんだろうけど……。
「あ、はい。お湯、沸かしなおします」
「俺、向こうに行ってるね」
シュンがそう言って台所を出て行った。俺は今起きた出来事を考え、顔から火が出るくらい恥ずかしくなった。
コーヒーを淹れ終わると、両手にカップを持ちシュンの居る部屋に向かった。
「お待たせしました……」
部屋に入ると、シュンがソファーに座って目を瞑っていた。
「あの、シュンさん?」
テーブルにコーヒーを置いたけれど、一向に気が付く様子はなかった。
「コーヒー入りましたけど…」
近づいて声をかけると、シュンが「うーん」と背伸びをしてからボンヤリした目で俺の方を見た。
「ありがとう。でも、ごめん。眠い……」
そう言ってソファーに横になってしまった。困った俺は、コーヒーを飲みながらしばらくシュンの寝顔を眺めていた。無防備な寝顔が可愛くて、自分より年上の男性だなんて考えられなかった。
それから、俺は思い出したようにシュンに布団を掛け、それから風呂場へ急いだ。
服を脱いで風呂場に入った途端、さっきのシュンとのキスを思い出した俺の下半身は、すっかり元気になってしまった。
自分の言動がものすごく恥ずかしいと思っているのに、その思いに反するように下半身の熱はますます上がっていくようだった。
「ごめんなさい、シュン……」
ボディソープで身体を洗いながら俺はシュンの手を思い出し、悦に入っていた。
風呂場で色んな意味でスッキリした俺は、スウェットに着替えて自分のベッドに向かうことにした。
自分のベッドに行く途中ソファーを覗くと、シュンは相変わらず規則正しい寝息をたてていた。
「もう一度だけ……」
俺はそう呟いてシュンの額にキスをした。
「お休みなさい」
そう声をかけてから俺は自分のベッドに入った。だけど、脳が興奮しいて、なかなか眠ることが出来なかった。
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