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第18話
シュンの話を聞くのは辛かった。シュンが誰かと恋愛をしていたということではなく、シュンがその時代どんなに苦しかっただろうと思うと、涙が出そうだった。
俯いたままのシュンを俺はギュッと抱きしめた。
「俺さ、鷹人君に初めて会ったときビックリしたんだ。君が英明に似てたから。背の高い所も、身体つきも、やさしそうな瞳も。ごめん、だから俺、鷹人君にあいつを求めていたのかもしれない」
その時、シュンが時々見せていた寂しげな表情の理由がはっきりした。シュンは俺の中にそいつを探していたんだ……。
「俺だったら、そんな酷い事言わなかったのに。俺だったら、シュンさんを泣かせなかったのに。シュンさんの傍にずっと居られたのに」
俺は悔しかった。どんなに拒絶されてもずっとシュンの心を占めていたそいつ。俺は絶対そいつを抜かす事は出来ないんだ。
「ありがとう、鷹人君。でも――」
「分かってます、シュンさん。貴方の特別な人にはなれないって」
「ごめん」
「でも、それでも、もし許してもらえるなら、貴方の友人として近くに居たい」
「……鷹人君?」
「俺、貴方の一番になりたいとか、そんな事抜きで貴方と付き合っていきたい」
「ホント?」
「俺、もう貴方を困らせるような事言いませんから。ちゃんと普通の友人でいいですから」
俺がそう言ったのに、シュンの顔がドンドン近づいてきて、俺たちは、どちらからとも無く唇を合わせていた。
「俺、仕事行かなくちゃ」
シュンが上目遣いで俺を見ながら微笑んだ。その時、本当に普通の友達で良いって思っているのかよ、と俺は自分に聞いていた。
「そういえば、鷹人君」
「何ですか?」
「あの絵って、俺と君なんだろ?」
「あ、分かりました?」
「わかったよ。あれって、俺たちが初めて会った時のイメージだよね」
「えぇ。だって、俺にはシュンさんが天使に見えたんです」
「うーん、天使とか……そんな、良いもんじゃないけどね」
シュンが照れたようなにボソボソと呟いていた。
「それじゃ、色々ありがとう」
「いえ、俺の方こそ」
「そうだ、鷹人君。今度ライブある時、見においで。チケットやるから」
玄関に向かって歩きながらシュンが言った。
「あ、有り難う御座います」
「じゃ、またね」
「はい。仕事頑張って下さい」
シュンが俺に握手を求めてきた。
「ありがとう。君も絵、頑張れよ」
シュンを送り出した俺は、寝室へ行ってベッドに転がった。シュンの事を考えているうちに、いつの間にか眠ってしまった。
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