19 / 31
第19話
目が覚めると、もう夕方だった。バイトの日だったので、着替えをして出かける準備をした。スマホをポケットに入れようと手に取った時、メールが来ていることに気が付いた。
シュンからのメールだった。時間を見ると俺の部屋から帰って、1時間も経っていなかった。
『絵は俺の部屋に飾ったよ、有り難う』
出かける時間だったので、俺は慌てて返信メールを送った。
『喜んでもらえて嬉しいです』
玄関で靴を履いているとスマホが振動した。シュンからの返信がすぐに来たのだ。
『寝てたって? 羨ましいな、俺はすぐ仕事だったよ』
柔らかな表情で笑うシュンを思い出して、俺は玄関でしばらくにやけていた。
『ごめんなさい。シュンさんが仕事してたと思われる間、俺は夢の中でした』
何だか俺は、シュンの反応を楽しンでいるみたいだ……。
『ずるいぞ』
『すみません、シュンさん。仕事、お疲れ様です』
『ありがとう、お前も絵頑張れよ』
バイトに行きがてらメールのやり取りをしていた。まさかシュンとこんな風に繋がれるようになるなんて信じられない……。
いや、それより何より、酔った勢いだとは言え、シュンにキスをしかける俺って…。
そこまで考えて、シュンが学生時代に付き合っていたのが男性で、しかも俺に似ていたっていうことを思い出し、かなり複雑な気持ちになっていた。
それから数週間後、進藤からシュンに頼まれた絵はどうした? と聞かれ、必要以上に動揺してしまったことがあった。
その時は会話の途中で客が来てくれたので、客が引けたときに、絵を渡したこととオシャレな店で奢ってもらったことをサラッと話した。進藤は、その時の話をもっと聞きたそうだったけれど、部屋からの注文が続いたので、どうにかうやむやにすることが出来た。
何だかんだと、からかって来る進藤だけど、学校の友人よりも色んな話が出来る相手だからこそ、シュンとの話、俺がシュンに対して抱いている気持ちを話すのはマズいと思っている。
シュンから時々メールが来るようになったこと以外は、今までと何ら変わらない日々だった。
メールの内容もとても他愛のないで、時間が空いた時の暇つぶし程度なんだろうと思っていた。
子供っぽい内容で笑ってしまう時もあるけれど、それでも、俺にメールしてくれているという事実が嬉しかった。
嬉しいあまり、大抵俺はすぐに返信していた。でも、時々俺がメール見るのが遅くなったりすると、少し拗ねたようなメール(本気ではなく、いかにも冗談だというのがわかる感じのメール)が返ってきたりするので、なんだか年下の可愛い女の子のように思えたりする時がある。
女の子? そうだったらまだ良かったのかもしれない――。
ともだちにシェアしよう!