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第23話
それから数日後、宣言通りシュンがチケットを送ってくれた。今回のライブツアーのうち東京近郊である公演の3公演分入っていた。
バイトが入っていた日もあったのだけど、どうしても行きたくて、シフトを代わってもらい、その全部に行った。
3公演ともアリーナ席で、全部の公演でシュンは俺を見つけてくれたような気がした。
そして、あの曲を歌うとき、シュンは決まって俺の方に手を差し伸べているように見えてしまい、その度に胸が熱くなっていた。
サーベルの全国ツアーが終わって、しばらく経ったある夜、シュンがカラオケボックスに現れた。その日は俺と進藤が受付に入っている日だった――
「シュンさんお久しぶりです」
進藤が勢いよく声をかけた。
「やぁ、久しぶり。すぐに後2人来るから、先に入ってようと思うんだけど」
「はい、わかりました。では、112番の部屋です。これ……」
受付を済ませて、俺がマイクとリモコンのセットを渡そうとすると、シュンが「鷹人君、
持ってきてくれるかな?」と俺を見つめた。
「えっと、はい。じゃぁ、進藤、ちょっと行って来る」
俺がそう言うと、進藤が不思議そうな顔をしながら「了解」と答えた。
何でだろうと思いながら、シュンの前を歩いて部屋まで案内していった。そして、部屋のドアを開けて「どうぞ」と促すと、シュンが突然、俺の腕をグイッと引っ張った。
「鷹人くん、入って」
「え……はい」
部屋に入った俺は、マイクとリモコンをテーブルに置いて、シュンに「では、失礼します」と行って部屋を出ようとした。
「鷹人」
シュンが名前を呼んで、俺の身体を部屋の壁の方に押し付けた。
「シュンさん? な、何ですか」
「だまって」
そう言った後、シュンは俺をギュッと抱きしめた。そして、背伸びをしながら、俺の顔に自分の顔を近づけてきた。
「シュン、ダメだっ」
言葉の最後の方はシュンの唇によって音を発せられないままだった。シュンの身体を押し戻そうとしたけれど、シュンは俺をギュッと抱きしめて離さない。
「シュン、ダメだよ。俺、困る」
シュンが力を弱めた瞬間、俺はシュンを突き放そうとした。
「だめ、離さない」
俺よりも大人だと思っていたシュンが、子供のようにそう言って首を振った。
「友達が来ちゃいます?」
「来たっていい。俺、好きなんだ、鷹人が」
「ダメですって、シュン」
シュンの腕をどうにか解き、両肩に手を置いてシュンを見つめた。俺だって、シュンの事好きだ。大好きだ。
でも駄目だシュンには守るべき人がいる。それに……
「シュン、俺、英明さんじゃないんだよ?」
俺はシュンが高校生のころ付き合っていたという彼の名前を出した。
「そんなの分かってる。あいつは俺を拒絶した、でもお前は違う。いけないと思っても、俺、あの日からずっとお前が」
その時、部屋の前が騒がしくなった。俺は慌ててシュンから離れてドアを開けた。
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