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第25話
「シュンさん、どこへ?」
俺は緊張感の漂う中、やっとのことで聞いてみた。
「鷹人の家」
「え、何でですか?」
「君と抱き合いたい」
シュンがそっと顔を近づけ、耳元でそう囁いた。俺は背中がゾクゾクした。
「な、どうしてそうなるんですか?」
シュンは俺の言葉を無視して、どんどん歩いて行って、ついには俺の部屋の前まで来てしまった。
「ハイ、鍵出して」
シュンが俺の目を見ながらそう言った。俺が何も言わずい困っていると、シュンは俺のポケットから鍵を抜き取り、ドアを開けてさっさと部屋に入ってしまった。
「入りなよ、鷹人君」
あの、シュン、ここは俺の家なんだけど?
靴を脱いで部屋に入ると、シュンは立ったままの俺に抱きつき、キスを仕掛けてきた。シュンの唇の隙間から這い出してきた舌が、俺の唇を割って入ってこようとする。
「シュンさん、やめて下さい。俺、本当に困る」
理性を総動員させながら俺はシュンを拒んだ。
「俺が男だから? 年上だから? 芸能人だから?」
今にも泣き出しそうな顔で、シュンがそう言った。
「それだけだったら、俺はそんなの気にしないです」
俺がそう言うと、シュンは黙り込んでしまった。
「シュンさん?」
俺は必死に自分の感情を抑えていた。本当はキスを続けたかった。シュンが望むなら、その先だって――。
「奥さん、妊娠中なんでしょ?」
俺はシュンの頭を撫でながらそう言った。
「どうして知ってる?」
シュンが俺を見上げて、苦しそうな顔をした。
「シュンさんの友達が話してたって。進藤から聞いたんです」
シュンが「あぁ、そうか……」と呟いた。
「奥さんとセックス出来なくて溜まってるだけでしょ? シュンさん」
少しでも空気が軽くなるようにと思いながらそう続けた。
「違う」
「俺、英明さんじゃないよ?」
諭すように言ってみた。
「分かってるって言っただろ!」
シュンの瞳から一筋の涙が零れ落ちた。そんな顔しないで。俺がどんなに我慢してるか分かる?
「俺は英明じゃなくて、鷹人、君を愛しているんだ……」
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