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第26話

 シュンの言葉に俺の心は揺れまくった。俺だってシュンが好きだ、いや、これが愛してるって気持ちだったんだろうか? だから、やっぱり俺は言わなければならないと思う。シュンの子供には幸せになってもらいたいから。 「シュンさん、俺もね、友達で良いなんて言ったけど、本当はあなたの事を自分のものに出来たらって思ったよ」 「だったら――」 「ごめんなさい。でも、もうダメだよ。シュンには子供が生まれるんでしょ? 俺、シュンの子供から父親を奪う事は出来ないよ」 「鷹人君……」 「俺さ、母親がいないんだ。物心ついた時にはもう居なかった。父親は、母が死んだと言ってたけど、大きくなるにつれて、親戚の話が耳に入ってくるようになったんだ。母は他の男と出て行ったんだった。赤ん坊の俺を捨てて。シュンの子には俺のような思いをさせたくない。ましてや、自分の父親が男と出来ちゃったなんて、笑えない冗談でしょ?」  シュンが黙ったまま俺の事を見つめていた。 「俺、分かったんだ『愛する』って気持ち。好きで好きで自分のモノにしたい、でも、その気持ちを抑えてでも相手の幸せを願うってこと。俺はシュンを愛してる。だから、ダメだよ。あなたの家族を不幸にしたくない」  シュンが俺の胸に顔を埋めていた。気が付くと俺は泣いていた。ごめんなさい、シュン。 俺がメロドラマみたいな勝手な思いを、伝えてしまったから、こんな事になってしまったのかもしれない。 「鷹人が俺のこと本当に考えてくれてる事分かったよ、有り難う。俺の方が大人なのに、俺が言ってはいけない事だったのに……でも」  シュンが抱きついている腕に力を入れた。俺もシュンの身体に腕をまわして抱きしめた。 「シュンさん……」 「鷹人君、最後のお願いだから。俺の事抱いて欲しい。君が俺の事、好きだって言ってくれたこと忘れないように」  シュンが背伸びをして俺の唇にキスをしてきた。可愛いシュン、子供みたいなシュン。貴方を愛してる。忘れないよ、いつまでも。あなたと俺が、この瞬間、愛し合っていたってことを。 「鷹人君、ありがとう」  女の子ともまだ経験が少ない俺が、男性のシュンを抱くということについて、かなり不安な思いが胸に浮かんでいた。 でも、悲しいかな、きっとシュンは男性とも経験があったんだろう、スムーズにリードしてくれて、優しく俺を受け入れてくれた。  ベッドの上でシュンが甘えるように俺の身体に腕を回してきた。 「こうやって抱きあえなくても、またメールしていいかな?」 「えぇ」 「また、ライブも来てくれるだろ?」 「もちろん……」  俺は余裕があるふりをして、そう答えながらシュンの髪を撫でた。 「良かった」  俺の目を見て、シュンが安心したように微笑んだ。

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