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第11話(*)

 寝室にいるテラの膝に乗ると、ベッドが軋む音を立てた。 「何でも差し出せると言うのなら、膝を開いて」 「っ」  一瞬、身体を預けることに、ハナは躊躇った。  しかし、おずおずと膝を開くと、腰を抱かれて深く座らされてしまう。 「っ、……」  心臓がドキドキした。こんなに誰かと密着するのは、子供の頃以来、何年ぶりだろう。テラの肌の温もりが、着衣を通してじんわりとハナの背中に広がる。 「ふん」  テラは一瞥してから、ハナのTシャツの上から掌を縦に滑らせた。するりと鎖骨からウエストの下までを人撫でされると、くすぐったさに身体が強張る。 「何、を……」 「静かに」  思わず問うと、テラはハナの左の太腿に手を置き、右手で再びTシャツの上の脇腹を撫でた。 「ん、っ……」  もぞもぞして、くすぐったい。  くすぐられるよりもずっとソフトなタッチだった。ハナの身体をなぞりながら、反応を静かに見ている。 「──わ、っ」  やがて右手がTシャツの中に入り込み、直に肌を擦られると、どこかおかしな気持ちになってくるハナだった。 (──落ち着け)  ハナはかろうじて声を堪えながら、唇を噛んで忍んだ。そうでもしていないと、変な声が出てしまいそうだった。  テラの掌は柔らかく、触れるか触れないかのタッチが、やけに気持ちいい。まるで宝物にでも触れるようにされると、ハナは、大事なものとして扱われているような錯覚に陥った。 「あの、っ……これ、な……っん……!」  一体、何で、どうして、と聞きたくて口を開いた途端、テラの唇が、ハナの左の耳朶に歯を立てた。ザワッと背筋が泡立ち、軽く甘噛みされただけなのに、身体が言うことをきかなくなり、震え出す。  テラにそのことを悟られないよう、左の太腿に置かれた手に手を重ね、指の間に指を入れ、ぎゅっと握った。 「……そうでなくては」  その時、テラがぽつりと口を開いた。  ハナに握られていた左手の手首を返し、テラに手を握られる。同時に耳朶を食まれ、ハナの身体が反応すると、密かに首の後ろで笑みを漏らした。 (っ、何で……っ)  テラが、こうしたいというなら、ハナは従わねばならない。  それが、テラにとって、ハナが有用であることの証になるならば。  だが、愛撫に近い触られ方をすると、身体がわずかに温度を上げる。汗ばんで、どこか熱っぽい感じになってきた。もぞりと膝を閉じようとすると、「そのまま」とアルファに命令される。  そう、テラはアルファだった。  そのことを、今の今まで、あまり正しく意識していなかったことに、ハナは気づいた。

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