「ん、ぁっ……！」 　太腿から脇腹をなぞられ、鎖骨までを指で辿られる。唇を開くたびに、荒くなる息と共に、どうしても声が出てしまう。ハナは唇を噛み締め、どうにかそれを押し殺そうと努力した。 「っ……」 　しかし、先日はＴシャツの上からだった悪戯が、今日は下着一枚の他は何も身につけていない肌に直接、施された。ちゃんと抑制剤を飲んできているのに、テラの甘い香りがハナの鼻腔をくすぐる。思わず身を捩ると、ハナの髪が、はらりと一房乱れ落ちた。 （──どう、しよ、う……） 　抑制剤を飲んでいるはずなのに、こんなに気持ちがいい。 　身体は快楽に素直に反応を返し、下着を押し上げ、主張を繰り返す。じくじくとかさぶたの下が膿むように、ハナの中心も確たる刺激を欲しがっていた。 「は……っ、ぁ、ぁ……っ」 　テラの掌はしかし、巧みにハナの屹立を避けながら、肌に触れていた。まるでハナが音を上げて哀願し出すのを待っているような、意地悪い意図さえ感じる。それとも相手がアルファで自分がオメガだから、そう感じるのだろうか。 　やがてテラの指先が、これまで少ししか弄ったことのない両の乳首を押し潰し、摘んだ。 「そ、んなとこ、感じな……っ」 　ぎゅっと摘まれた乳首に、カアッと頬が火照った。男のそれは意味のないただの飾りだと、テラに初めて触られるまでは思っていたのに、やがてくにくにと弄られたり、乳輪をそろりと撫でられたりするうちに、どこかおかしな、あやしい気持ちになってくる。 「ぁ……それ、ゃ、……っ」 　テラの指に、ハナの乳首を摘まれたまま、先端を慰撫され、声が出てしまう。腰の奥にじわりと悦楽に似た熱が湧いてきて、もどかしくてたまらなくなった。 「どこをどう触られると困るのか、ちゃんと言えたらやめてやろうか？」 「え……？」 　快楽で半ば朦朧としたハナに、テラが背中から声を掛けてきた。ぐらぐらと揺れ動く理性にしがみついたまま、ハナが振り返ろうとすると、またぐりっと乳首を潰された。 「っぁ……！」 　悦い。 　熱い……。 　もっと欲しい、と思ってしまう自分を叱るだけの余裕もなく、ハナは本能的に腰を揺らした。 「ぁ、ぁっ……ぁ、も……っ」 　イきたい。 　気持ちいい。 　気持ちがいい──。 （……どうしよう。好きじゃないのに） 　テラの愛撫が、こんなに心地いいものだなんて。 　下着は愛液で濡れそぼっていたが、ハナは醜態を晒していることを、まだ自覚していない。 （こんなに感じてしまうなんて、怖い） 　ハナは、ただ、テラの手管に翻弄されながら思った。