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第18話

「あーもー、そんなこと言われたら、許すしかないにゃ!」  ネネが張り詰めた空気を壊すように雄叫びを上げた。 「ま、あたしたちも、フィンに黙ってハナをステージに上げちゃったし」  オトハがミキに視線を向けた。 「おあいこ? 引き分け?」 「そんなところでしょ」  ミキが肩を竦める。 「ありがとう……みんな……」  フィンの顔が、クシャッと泣き崩れた。心底、ホッとしたようだった。  明が話をまとめるように、一度締めた。 「フィンの欠員は足首骨折の疑いがあり、その後、捻挫であることがわかった、ということで押し通してある。わかってると思うが、今の話はくれぐれも外に漏らさないでくれ。運営のスタッフたちや、外部スタッフたちにも同様だ。わかったら、ステージの準備に入ってくれ!」 「みんな……本当にごめん。ありがとう。これからは心を入れ替えます」  フィンが涙を浮かべたまま、再び頭を下げると、「フィオーレ」たちは互いに目配せし合い、肩を突つき合って、言った。 「お礼ならハナに言いなよ。フィンの代わりを務めたんだから」  オトハの言葉に、フィンがクシャクシャになった表情を晒して、ハナの方を向く。 「ハナ」 「何も言わないで、フィンさん。ぼくも、すごく勉強になったから」  フィンの気持ちはいまいち理解できなかったが、そんな風に誰かを一途に想い続けられることが、逆に羨ましいとさえ感じるハナだった。 「ありがとう、みんな、ハナ……」  フィンが戻ってきてくれて、本当に良かった、とハナは思った。あとは、ハナが、ちゃんとフィンへ、バトンを渡せるように、残りの日数を頑張るだけだ。  そこで、ハナは、はたと思いついた。  これは、アルファの恋愛観を教えてもらえる絶好の機会なのではないだろうか、と。フィンなら、ちゃんと答えてくれるのではないか。そうすれば、自分が牧野に対して抱いている、もやついた想いも、少しはすっきりするかもしれない。 「あの、その代わりと言ってはあれなんですが……、その、フィンさんの恋愛に対するスタンス、聞いてもいい、ですか……?」 「ハナにゃんが交換条件……!」 「珍しいな、どうした?」  途端に「フィオーレ」たちが騒がしくなる。 「あ、いや、あの……実は大学の課題で、レポートを出さないとならなくて……。でも、ぼく、そういう話を誰か他の人と、したことなくて……」  恥を忍んで告白をすると、泣き笑いのフィンが、ハナに笑顔を向けてきた。 「何でも聞いて。でも雪が降るかも」  途端にはちゃめちゃに女子トークがはじまった場を、明が仕方なしに静めた。  詳しい話はステージの後で、ということで話がまとまると、ハナを入れた「フィオーレ」たちは、今日のセットリストを確認し、円陣を組んだ。

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