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第26話(*)
「ぁ、……ぁっ、ぁ……!」
ホテルに戻ると、ハナは、試着した衣装をすぐに脱がされて、テラの寝室に引きずり込まれた。
動いても縒れないことを確認された衣装は、トルソーに着せられることもなく、裁断用のテーブルの上に放り出されたままだった。
膝に乗り、後ろからテラの大きな手で快楽を引き出される。まるで溺れる寸前の赤子のように、ハナはテラのされるがままに反応し、身を捩った。
「あっ、……あふ……っ、ん……、っ……!」
あんなことがあったばかりだというのに、テラはハナに引いたりしないのだろうか。不安になるたびいにテラの掌が翻り、ハナを悦楽の淵へと落としていった。
「こんなに濡らして、いけない子だ……」
「あっ……!」
今まで決して触れることのなかった、ハナの剥き出しの昂りに、テラは触れた。下着を押し下げられ、ふるんと飛び出した性器は、先端をぐっしょりと先走りで濡らしている。糸を引く状態に、テラは揶揄するように言葉でも嬲った。
ずっと、テラのジャケットの肩を後ろ手に握って耐えていたハナの利き手の手首を掴むと、テラはおもむろに、ハナの屹立へと触れさせた。
「ひぁ……っ」
じん、と痺れるような感覚とともに、脳髄がキンとした。
「……自分でするんだ、ハナ」
「ん、んっ……!」
嫌だ、と答えたかったが、唇を開いたら嬌声しか出ない気がして、言葉を発することができない。耳朶を噛まれるとザッと鳥肌が立ち、どんなに抵抗しようとも、アルファに言われたら抗えないことを、心に刻まされる。
欲しい。欲しい。全部欲しい。
ハナは身体がそう言っているのに、抗うことができなかった。触れられたこともない後蕾が疼いて、ハナの理性を削り取っていった。
「奥まで抉って、かき回してやろうか? 捻じ込んで、拓いて、満たして、注いで──」
テラに耳殻を甘噛みされながら、そんな風に焚きつけられると、驚くほど急速に、熱が上がってゆくのがわかった。
ぐじゅぐじゅと溢れてくる、充溢を嬲る手の摩擦音が卑猥だった。テラは最初こそ半ば強制的にハナの手に手を重ね、導いたが、もう、今は、テラの誘導がなくとも、自然とハナの掌は、気持ちいいところを刺激し、動いていた。
「んっ、ぁ、っもう……っ!」
激しい刺激に身体を仰け反らせたハナが、絶頂間近であることを訴えると、テラは後ろから耳殻を甘噛みしてきた。
そして、こう囁く。
「──名前を……」
「は……っ? ん、ぁ……っ」
「名前を呼んでくれ」
「ぇ……? ぁ、ぁっ……!」
「名前だ。私の、名前を……」
言われて、快楽にぼうっとなった思考がかろうじてそれを認識する。
「ぁ……っ、テ、ラ……っ」
「もう一回」
「テラ……ッ、ぁ……!」
「もう一回」
「テラ、ぁぁ……っ!」
「もう一回」
「テラ……ぁ、ァ、……っテラ……ッ」
指は、ぐじぐじと膿んだ後蕾に、一度たりとも入れらなかった。
しかし、頭の中を、身体と一緒にかき回されているようで、どうしようもなく気持ちいい。
「も、ゃー……っ」
いきすぎた愉楽に全身を震わせて、ハナはこれ以上されたら、自分がどうなってしまうかわからない、と感じた。
視界が霞み、内腿が震える。
すぐそこに絶頂の壁があるのに、上り詰めることができないことが、もどかしく、同時に怖ろしかった。
「ぁ……こわ、い……っ!」
「ハナ──……、っ」
ハナがかろうじて捕まっていたテラの肘の内側をぎゅっと握る。そのままテラのうなじにすり寄るようにして、息を吐いた瞬間、それはきた。
「ぁ……っ、ぁ! ぁぁっ……! ひぁ……っ!」
絶頂と呼ぶには激しすぎる遂情が、ハナをさらなる高みへと押しやろうとする。
刹那、ボロボロと溢れた涙が、頬を伝った。
「ハナ……っ」
背後から、息もできないような強さで抱きしめられ、痙攣した身体を、ほとんど制御できないままに、ハナはテラに預けた。
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