47 / 49

第47話(*)

 嬉しかった。もっと、ちゃんと、しっかり、痕を付けて欲しい。ずっと理解できないと思っていたけれど、今なら、恋のために身を投げ打つことも厭わなかったフィンの気持ちが、少しだけ理解できるような気がした。 「は、ぁ……っ、テラ──……ッ、ぁ!」  唇をうなじに当てられるたび、ビリ、と神経が過敏になる。そこはオメガにとって特別な場所だ。そこは、──テラのための場所だと、ハナは穿たれながら思った。  しかし、テラは、最終的に、そこに軽く唇を落とし、言った。 「……これは、先の楽しみに、取っておこう」  そう囁かれ、ハナが敏感になる場所である、耳朶を食まれる。  刹那、ビリッと体内を電流が流れ、気がつくとハナは射精していた。 「あ……」 「また、イッてしまったね……」 「んっ……ご、め、なさい……っ、ぼく、い、いやらし、くて……っ」  テラはまだ一度もイッてないのに、四度も先に出してしまっていた。にもかかわらず、身体がまだ、悦んでいる。オメガのあさましさを見せつけられたような気がして、ハナが思わずべそをかくと、テラは優しい指先で、ハナの眦を拭って言った。 「別に、恥ずかしがることじゃない……。私がきみと、何度想像上でセックスしたか、知っているか……? 人間だって、獣の遺伝子を持っているんだ。好きな人と交われば、それが表に出てくるのは、当然なんだ、ハナ」  テラの額に、髪が一房、張り付いている。  その光景を目撃した瞬間、ハナは静まっていた羞恥心が蘇るのを意識した。 「テラ、テラも、悦い、ですか……?」  自分だけが乱れているのだと、ずっとそれをあさましいことだと思っていた。  でも、好きな人と一緒にあさましくひとつになれるのなら、それは何か、もっと尊いことのような気がするのだった。 「きみが考えるよりも、ずっといいよ。多分、きみが想像するよりも、ずっと……」 「ぼく──……、あなたのことが、好き、です……」  何をされても、きっと、この気持ちは変わらない。  ハナが告白すると、テラは唇を噛んで、何かがこみ上げてきたような、表情をした。 「ハナ──、頼みがある……。少し先へ進んでみたいが、きみの最奥まで、私を入れさせてくれないだろうか……?」  言って、少し充血した目で見下ろすと、ハナの手を、結合部へと導いた。  テラの巨根は挿入されたものの、まだ遊びの部分を残している。  その部分を触らせながら、ぬち、ぬち、と緩く出し入れするテラは、ハナから見ても、凄く卑猥だった。 「……これ、を」 「そう。奥まで。きみの奥まで挿入りたい。今回は、それだけで我慢する」 「がま……ん?」 「きみとはいずれ、つがいになりたい。でもそれは、きみがもう少し、セックスや私の存在に慣れてからの方が、いいと思う。その代わり、私の我が儘を、ひとつだけ聞いてくれないか……?」 「い……です。して、くださ……い」  少し怖かったが、テラと一緒にすることなら、大丈夫な気がした。ハナが頷くと、テラはちょっと苦しそうに笑い、一度ぬぷぷ、と奥近くまで入れていた巨根を先端部分だけ抜いた。それから、眉を顰めて軽く竿を扱くと、ハナの腰を抱いて、予告なしに、一気に突き上げた。 「ぁ、ぁあぁっ……!」  その刹那、何か鈍い衝撃とともに、ぱちゅん、と水音がし、ずんっ、と下腹の奥の、狭い最奥までテラが挿入ったのが、わかった。そのまま激しく出し入れされると、ぐちゅぐちゅとハナの後蕾から、卑猥な水音が立ち続けた。 「ふぁ……っ、あ、あん……っ! な、か……っ、中、熱、あつ、いぃ……っ!」  上り詰めたはずの場所から、さらに一段高い悦楽へと放り投げられるような感覚だった。テラも喉仏を下げ、呻き声を上げた。そのまま、中を薙ぐように攫われ、テラの口付けを受けながら、ハナはさらなる高みへと上っていった。 ☆  気がつくと、タラタラと白いものの混じった先走りを吐き出し続けながら、ハナは嬌声を上げていた。中を行き来するテラが、次第に気遣う動作から、抽挿を速くする。 「よ……くせい、ざい、は……っ」 「朝、飲んだきりだ。足す必要は、ないと思った……。きみも、飲んだのだったね? じゃあ、今夜は発情はしないかな……?」 「ぅぁ、……っん! あ、もう……っ」 「このまま、きみを孕ませてしまいたい……」 「あ……ん、っ、ふぁ……っ!」 「好きだ、ハナ……、ハナ、きみのことが……」 「ぁ、ぁっ……! ぼく、も、テラ……っ、好き、すき、ぃっ……!」  互いに打ち付け合う肌の音がする。  激しくなってゆく抽挿に耐えながら、すぐそこにある高みに手を伸ばそうとしていた。  テラの獣のような息づかいを聞きながら、ハナもまた同じように、すすり泣いていた。  もう限界、と思った刹那、テラが耳元で囁いた。 「中に、出しても……?」 「出し、て……っ、いっぱい……!」  太腿の内側を撫でられながら、唇を吸われて、ハナは今夜何度目になるかわからない精を放った。ドクドクと何度も突かれるたびに放出を繰り返す長い快楽に溺れて、最後にひと突きされると、熟れきった体内にテラの重ったるい精液が、大量に放たれたのがわかった。 「あ……、ぁっ……!」  放った精液を、まるで名残りを惜しむかのように塗り込められる。  その、テラの溢れんばかりの執着心が、ハナは何より嬉しい──と思った。

ともだちにシェアしよう!