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第48話
「ん……っ」
急速に浮上して、意識が戻ったのをハナは悟った。いつしか、気を失っていたようだったが、テラの荒い息がまだおさまっていなかったので、一瞬だけのことかもしれなかった。
「──大丈夫……か?」
汗にまみれた身体は、ハナだけのものではなかった。テラもまた、放出した後の気だるさを抱えながら、そっとハナの額を拭った。
「はい……。テラ、は……?」
「もう一回戦、したいぐらいではあるが」
言って、戯けた顔で笑った。ハナもテラがそう言うなら、相手を務めたかったが、もう腰が立たなさそうだった。
テラもハナのその気配を悟ったように、そっと腕枕をして、ハナの隣りに横になった。
「あの……ぼく、ひとつ気づいたことがあります」
「ん……?」
「抑制剤を飲んでいても、あなたのことが、好きだって……。ずっと、好きなんだって……。困惑するぐらい、ずっと、いつも、あなたのことが好き……みたいで。あなたの傍に、いたいって、思ってる、みたいです……」
すると、テラはそんなハナの額にキスを落とした。そのまま額を寄せてきて、すり、と甘えられると、ハナはそれを好きだ、と感じていることを発見した。
「ぼく──あなたとできて、よかった……。オメガで、良かったです……」
「……私の愛しいオメガ──ハナ……」
そう言ってテラが身体を寄せようとした時、中にまだ入っている屹立の角度がわずかに変わり、ハナは「んっ……」と甘い声を出してしまった。中がぎゅっと締まって、テラが少し呻く。
「……きみは、本当に抑制剤を飲んでいるのか? それでこれほど乱れるのなら……、」
「ぼく、やっぱり変でしたか……?」
不安になって、ハナが尋ねると、テラはフッと笑った。
「いや……。飲まなかったら、どれほど艶やかになるのだろうと思うと、楽しみが増えた」
言って、眠そうに目を瞬く。
ハナも、体力と気力の限界に達していて、もう目を開いているのも互いに精一杯だと思うと、何だか可笑しくなってきて、少し笑ってしまう。
人は、こんなに夢中になれるほど、誰かを好きになることがあるのだ、と思った。もしも願わくば、ひとつだけ希望がかなえられるとしたら、ハナは、ずっとテラと一緒にいたい、と思った。
彼のつがいとして、人生を送れるなら、これほど幸せなことはない。
「──テラ……?」
「? どうした……?」
「ぼく、テラと出逢えて、本当に良かったです。……あなたのことを、愛しています。心から、ずっと深いところで。……こんなぼくを、愛してくれて、ありがとうございます」
「ハナ──……」
「ぼくも、テラのことが好きです」
「……きみのことが、私も好きだ、ハナ。全く、愛しくてたまらない……」
言うと、二人は目を合わせて、そっと微笑んだ。
もうすぐそこに睡魔がいたが、あと少しだけ、二人だけでいたい、とハナは願っていた。
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