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常磐家の宴会

常磐家の人間は酒が好きだ。毎日の晩酌は勿論、人数が集まればすぐに宴会が開かれる。 「騎麻、ボトル開けてくれ」 「はいはーい」 「おつまみの追加言ってきてくれるかしらサハラ」 「了解」 ハイペースでボトルを空けていく大人達のために、子供達はバーテンダーにもウェイターにもなる。たまに子供達にも酒を振舞ってくれることもあるが、基本は禁酒、飲むのは大人達だけだ。 そして気持ちよく飲み進めていき、飲み始めて大体30分程経った頃には酔っ払いが完成している。と言っても、酒豪の集まりなので、気分が良くなり楽しくなってきたな、という状態だ。 「レイラ」 そうなった大人達はここである子供を呼び寄せる。白い肌に白い髪と薄く輝くアメジストのような瞳が特徴的な、三つ子の三男にあたる常磐レイラ。幻想的なその見た目は美形揃いの常磐家の中でも目を惹く存在で、少年とも少女とも見える中性的な顔立ちは三つ子の中でも一番幼い。小さな頃から一番身体が弱く、若干の差ではあるが兄弟と比べて身体も小さかったレイラは、家族の中でも加護するべき存在だった。 「大分身長伸びたわね」 「でしょー!俺にもやっと成長期が来たからね!」 しかしそれも小さな時の話。成長と共に身体も丈夫になり、儚げな見た目とは逆の破天荒な、父親の遺伝子をふんだんに受け継いだ性格へと成長していた。 「本当にちゃんと成長してんのか〜?」 「ちょっと確認してやるよ」 そう言う父親の十六弥とその弟の亜津弥にスポンっと服を脱がされる。酔っ払いとは思えないその早業に一瞬何が起きたかわからないレイラ。状況を理解した時にはズボンにも手をかけられており、勢いよく下げられ下半身も露出する。簡単に脱ぎ着が出来る部屋着を着ていたことを後悔する瞬間だった。 「ぎゃっいきなり何すんのさ!」 「確認だよ確認」 「子供の成長を見守るのは親の務めだろ?」 暴れるレイラを簡単に後ろから抑え込む亜津弥と、正面から観察するようにジロジロと見る十六弥。沢山の人がいる中でいきなり服をひん剥かれたレイラは羞恥心に顔を赤くする。十六弥達の行動にも驚く素振りを見せず、笑いながらグラスを傾ける他の大人達と、呆れ顔になりながらも助けてくれる気配のない兄弟に若干涙目だ。 「相変わらず細いなぁ」 「いや、でも骨は浮いてないしこんくらいは許容範囲だろ」 「真面目に観察しないでよ・・・」 身体中を触られながら観察されいたたまれない気持ちのレイラ。 「こっちもいつの間にか成長してやがる」 そう言い足の間にぶら下がるそれを何の躊躇いもなく握られ、もうどうにでもなれとひたすら恥ずかしさに耐える。 「あら本当!昔はあんなに小さくて可愛かったのに」 「いつの話!?」 「レイラがおねしょして泣いてた頃の話」 「あぁ、買ってきた卵を孵化させようとベットの下で温めてた頃か」 「俺の事神様って言ったの素直に信じてた頃だな」 「あ"ぁぁぁぁぁあぁぁああ!!!!!」 スラスラ出てくる自分の昔の話に思わず赤面するレイラ。周りからは微笑ましい子供の昔話でも本人にとっては聞きたくない黒歴史らしい。裸にされるよりも真っ赤な顔を両手で隠している。 「も〜あんまレイラ苛めないでよ」 「父さんもあんま悪ノリしてると嫌われるよ」 「ほらレイラこっちにおいで」 さっきまで大人達の悪ノリを放置していた兄弟や従兄弟も流石に可哀想になり、レイラを助けにやってきた。亜津弥に抱っこされた状態のレイラを従兄弟の騎麻が離させ、父親である亜津弥に呆れた視線を寄こす。次男のサハラがずり落ちていた下着とズボンを履かせてやり、長男のカエラはレイラの頭を撫でながら大人達を非難する。 「ごめんね〜レイラ可愛いからつい」 「こいついちいち良い反応するからさ」 「悪い悪い」 全く悪いなんて思って無さそうな十六弥達の姿にため息が出る。実際十六弥達に悪気は無く、むしろ可愛がっているレイラにちょっかいを出したいだけなので、基本はカエラ達も放っておく。ただ完全に放置するには何をやらかすかわからないので、今回は早めに助け出すことにしたのだ。 「あらあらまた十六弥に苛められたの?」 「う"ーカレンちゃぁん」 「あ、こらレイラ、カレンにばっか甘えてないで俺のとこにも来いよ」 席を外していた母親であるカレンに泣きつくレイラに苛めていた本人である十六弥が嫉妬する。甘えて欲しいなら何故泣かすようなことをするのかと思う子供達。 毎回宴会の度に大人達に弄られて遊ばれるのを分かっているのに、呼ばれると素直に近づいて行くレイラもレイラである。と、実はこの場にいる全員が思っているが、それがレイラの可愛いところなのでその事には誰もつっこまない。 結局大人も子供も素直でちょっと抜けているレイラが可愛くて構いたくて仕方ないという話。

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