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長男 カエラ
俺は常磐カエラ、今はイギリスに住んでいて12歳。俺には弟が二人いる。といっても三つ子なので歳は一緒。一番最初にこの世に飛び出してきたから一応長男なだけ。
それでも小さな頃から自分は"お兄ちゃん"だと思っていたし、弟達が可愛くて仕方ない。
「カエラ、」
名前を呼ばれ振り返るとそこには次男のサハラの姿が。サハラは落ち着いていて、俺達兄弟の中では比較的大人しい。ただ自分の意志はハッキリしていて、それでいて周りに合わせる柔軟さも持っている。俺の自慢の弟第一号。
「レイラがまた十六弥君に捕まってる」
「あらら〜可愛がるのは良いけど、いじめすぎるからな十六弥君は」
毎度毎度父親である十六弥君に玩具にされて遊ばれる三男のレイラ。ぶっちゃけ十六弥君が構いたくなるのが理解出来るほど、兄弟の俺達からしてもレイラは可愛い。歳も顔も同じはずなのに、何故だか見た目も中身も本当に可愛い。ちょっと我儘で甘えるのが上手く、それでいてしっかりと空気は読める。俺の自慢の弟第二号。
「ほらほら、もうギブアップか〜?」
「全然動いてないぞレイラ」
「むーーー!!!!」
サハラに連れていかれるままに向かった先では、十六弥君に羽交締めにされているレイラと、それを横で見ている亜津弥君の姿が。どうにか抜け出そうと暴れるレイラだけど、馬鹿力の十六弥君相手では全く抜け出すことが出来ない。適わないことがわかっていてムキになるレイラも、子供相手に本気を出す十六弥君も、それを止める事もせず見守る亜津弥君もよく見る光景だ。
そしてそろそろどうにも出来なくなったレイラが拗ね出す頃。
「カエラぁ〜サハラぁ〜〜」
助けてと涙目でこちらを見てくる姿はまるで子犬のようで、ブラコンを自負している俺からすると可愛くて仕方ない。それはサハラも同じようで、隣からは"可愛いな"なんて呟きも聞こえてくる。
「もぉ〜そろそろ離してあげないとレイラ泣くよ」
「仕方ねぇな」
あっさり力を抜いた十六弥君から解放されたレイラは逃げるように俺達の元へ走ってくると、そのままの勢いで抱きついてきた。三つ子なのに若干俺やサハラより小柄なレイラを抱きとめ、ふわふわの白い髪を撫でてやる。
あくまでレイラが可愛くてじゃれているだけのつもりの十六弥君だけど、手加減が無さすぎるんだよな。
「あんま毎日泣かしてるとそのうち"十六弥くん嫌い!"って言われるよ」
まあ実際はそんな事言わないのは分かっている。俺の可愛い弟は苛められるが分かっていても、十六弥君を見つけると近寄って行く位、家族大好きっ子だから。
「言われねぇように泣かした後はがっつり甘やかしてるだろ」
「まず泣かさなきゃいいのに・・・」
言葉の通りすでにレイラを甘やかすことにシフトチェンジしている十六弥君は、俺に抱き着いていたレイラを抱き上げ、上機嫌でキスしていた。しかもそれは俺やサハラもターゲットに入っていて、レイラを抱いたまま交互に頭を撫でられる。
十六弥君は口は悪いし大人気ない所はあるけど、表情や行動の中に"大好きだぞー"という気持ちが溢れている。だからって俺の可愛い弟を泣かすのは程々にして欲しいけど。
「カエラ!サハラ!十六弥くんが今日の晩ご飯は庭でBBQにするって!!」
さっきまで泣きそうな顔をしていたのに、肉好きのレイラはあっさりと機嫌を直して、嬉しそうに十六弥君に抱き着いている。俺もBBQは楽しいし好きなんだけど、にやにやしている父親の顔にチョロ過ぎる弟が心配になった。
「もうすぐ華南達も到着するって。玲のとこも夕飯までには間に合うだろ」
実は今日は定期的にある親戚で集まる日。普段日本にいる亜津弥君達や、アメリカにいる玲弥ちゃん達も揃って今回はイギリスに来る。
「騎麻達に会うのはお正月に集まった振りだから久々だな」
サハラが言う通り、日本にいる従兄弟の騎麻は今全寮制の学校に通っているので、お正月以来会っていない。妹の風月や弟の真斗はまだ初等部なので自宅から通っているけど、二人も中等部からは寮になるらしい。
「また学園の話して貰お〜っと!」
「そうだね、中等部はまた初等部とは違うのかな?」
通信教育ですでに大学の勉強をしている俺達は、今まで学校というものに通ったことが無い。勉強は問題無く出来ているし、十六弥君やカレンちゃんの仕事の手伝いをすることもあるので、知識も経験も同年代より豊富だろう。でも、学校というものについては初心者中の初心者、完全なるビギナーだ。なので会う度に従兄弟達に学校の話を聞くのが習慣になっている。
俺達もいつか学校に通ってみたいと思う。
そしてそれが現実になるのは4年後ーー。
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