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十六弥とカレンの出会い 2
「大丈夫か」
「えぇ、助かったわ。カレンも大丈夫?」
そうハンナが声をかけたことによりやっと一緒にいた女性へと顔を向けた十六弥。そこにいたのは白く美しい肌に、白に近い綺麗なブロンドヘアの美女。まだ幼さのある顔から歳はまだ10代だろうか。
「助けてくれてありがとう」
そう言い笑った顔は初めて見る程美しかった。
そのカレンと言われた少女がハンナの言っていた新人ちゃんだとわかり、3人は連れ立って先程のバーカウンターに戻った。
「流石十六弥だな!ありゃあいつらもうここに来れないぜ!」
「あいつら大したことないな」
様子を伺っていたらしいサムが興奮したように言う。これに懲りていればあいつらも当分ここにきて横暴な態度を取ろうとは思えないだろう。
「さあ、何を呑む?」
「ジョニーウォーカーをロックで」
「キールにしようかしら」
「オレンジジュースで」
「「「え」」」
オレンジジュース?そう言ったのは十六弥の左隣に座ったカレンで、それを聞いた他の三人は思わず聞き返した。全くいないわけではないが、あまりこういった場でノンアルコールを呑む人間は多くない。しかも今ここにいる十六弥とハンナは酒豪と言ってもいい。つまり酒を水のように呑む人間なのだ。
「え、カレンあんたお酒呑めないの?」
「呑めないと言うか、呑んだことないの。私一応18歳だし」
「んなこと気にすんなよ。俺も19だけど普通に呑んでるし」
「「ええ!?!?」」
カレンが未成年というのは何となくその場の全員が気づいていたし、連れてきたハンナもそのことは了承済だ。しかし、まさかの十六弥が未成年だとはそれなりに付き合いの長いサムもハンナも初耳だ。十六弥がここに通い始めて、すでに2年近い。ということは、この男は17歳からここに入り浸っていたのか。
その放つオーラの堂々とした様子や見た目の洗礼された様子からハンナと同じくらいだと思っていた。それがまさかの未成年だとは驚きが隠せない。
「じゃあ私も呑んでみようかしら」
「じゃあオレンジジュースベースの酒を用意するよ」
そう言いカレンのためにカクテルを作り始めたサム。それを待ちつつ改めて初対面の十六弥とカレンは自己紹介をすることにした。
「俺は十六弥。まあさっきも言ったが19歳。学生じゃない、働いている。まあ親父の手伝いだな」
「私はカレンよ。18歳。駆け出しのモデルってとこかしら」
ハンナの連れということもあり、やはりカレンもモデルをしているようだ。先程の騒動の時もだが、カレンは特に怯えた様子も無くなかなか肝が座っているようだ。駆け出しといいつつ、この堂々とした振る舞いと持ち前の美貌で実はすでにちょっとした売れっ子である。
「何よ、カレンは知っていたけど、十六弥もそんなに若いなんて知らなかったわ・・・。私だけおばさんみたいじゃない」
「年齢なんか気にする必要ないだろ。いい女は年齢に関係なくいい女だ」
「・・・そうね」
少し不貞腐れたように言うハンナに十六弥が言った言葉は本心だ。冗談のようにお互いに言い合う言葉だが、十六弥はお世話を言わないため本当にハンナをいい女だと思っている。
「二人はもしかして付き合っているの?」
二人のやり取りにそう思う人間は多いだろう。カレンも初めて見た様子に、ついその疑問を口にした。しかし、実際には二人にそのような男女の関係は一切ない。まあ、酒とその場の雰囲気でキスくらいはしたことがあるが、それだけだ。
むしろ、十六弥は今、目の前の初めて会った少女にとても興味を惹かれていた。美しい見た目は、十六弥のタイプそのものだった。そして物怖じしない様子や上品かつ愛嬌のあるカレンの事をもっと知りたいと思っていた。
「ハンナとは残念ながら何もないな。むしろカレンに興味があり過ぎる。俺と付き合う気ない?」
「あんたねぇ・・・」
出会ってまだ5分程だというのにストレート過ぎる十六弥の発言にハンナは呆れた。しかし、十六弥は普段軽口を叩くことはあってもその手の冗談を言うことは無い。そして、
「あら、実は私も十六弥にとても興味があるの。私もこの後どう十六弥を誘おうか迷っていたところよ」
「カレンまで・・・」
つっこむのを諦めて目の前に出されたグラスに口を付けるハンナ。たまたま今日会い紹介した二人が、こんな短時間でカップルになるとは思っていなかった。しかし、この二人はきっと気が合うだろうなと思い紹介したいと思っていたのはハンナ自身だったりする。
「サム、私達も付き合う?」
「おっと、そんなこと言うと本気にするぜ?」
この2年後十六弥とカレンは夫婦となり、3人の子供に恵まれる。
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