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トップシークレット
「なんか、俺がバイクに乗ってピザ食べながら犬の散歩させてたらしい」
「は?」
今日は一日オフ。朝のアラームをかけずに起きる目覚めは最高。朝食というには遅くランチの時間が近かったが、今日は予定も入れておらず一日だらだらすると決めているので問題ない。
寝てる間に届いていたLINEに目を通せば、何通か来ていた友人からのLINEの中に写真が添付されていた。
“行く先々にいるんだけど分身出来んの?”
そう文章と共に送られてきた3枚の写真。
「これ見て」
送られて来た写真を向かいでコーヒーを飲んでいる嵐ちゃんに見せる。そこには黒の細身のパンツに黒地にKRNのロゴの刺繍の入ったスウェット、帽子にサングラスという完全にオフモードの俺の姿が。
⋯いや、正確には“俺達“の姿が写っていた。
「⋯遠くて分かりずらいけど、ピザがレイラだな。で、バイクに乗ってるのはサハラで、ティノの散歩してるのはカエラか」
「流石嵐ちゃん♡」
そう、送られてきた3枚の写真はそれぞれ別人。俺が写っているのはピザを買って嵐ちゃんを大学近くまで迎えに行っている最中のものだけだ。
「あ、嵐ちゃんと合流するまで買い食いしたのバレたじゃん」
「口にソースついてたから気付いてたぞ」
「え〜言って〜」
それぞれの高校を卒業してから俺達は一度十六弥くんとカレンちゃんのいる家に戻ってきた。そのまま俺は嵐ちゃんと共に家を出て、と言ってもすぐ近くで同棲を始め、カエラはパティシエの勉強をすると言ってフランスに、サハラは世界各地を旅行して回っている。
それが先月は二人の帰省が重なり久々に家族が揃っていた。と言っても、仕事や予定がある。昔のように兄弟が常に一緒にいるのが当たり前、という感覚もそれぞれが違う高校に通った事によってだいぶ変わった。一緒にも過ごすし、別々で好きな事もする。それが出来るようになったと言った方が正しいかもしれない。
「それなのに三人が同じ格好してるとか三つ子の以心伝心凄すぎない?」
「揃えたわけじゃないのか」
「スウェットは前の日にカレンちゃんがくれたから着ちゃうよね」
まあ、貰ったのはスウェットだけでは無いので三人が同じ服を選んだのも偶然であるし、全身のコーディネートが同じなのも偶然。シンプルな合わせなので被るのは珍しくないが、それにしても面白い。
しかしカエラとサハラが今はここに住んでいないということしか知らない友人は、どうやら同じ服装をした俺達を全て俺だと思ったらしい。近所に住んでいるので行動域が似ているからこその偶然だ。
「お前らってそんな目立つのに、なんでカレンさんの息子なのもTOKIWAの御曹司なのも三つ子なのも世間に知られてないんだ?」
嵐ちゃんがふと疑問を口にする。近所に住んでいる人間や関わりのある人間には普通に知られている事実だが、それが世間に広まることがない。それが気になっていたのだろう。
「あぁ、俺らの情報がどこかに出てもTOKIWAの力で公表前に揉み消すから」
「物騒な言い方だな」
隠すような関係ではないから普段から好き勝手行動している。だけど、それを周囲に好き勝手ネタにされるのはプライベートを邪魔される行為だ。目立つ存在、世間が気になる存在、だから全てを曝け出さなければならないという訳では無い。
自分の力、功績での注目ならいい。だけどそれ以外のものはただの知らない他人への娯楽や意味の無い誹謗中傷のネタになるだけ。そんなものの為に自分達の私生活を捧げるつもりなんてない。
「だから常磐家の情報は一切報道禁止。それを破ればTOKIWAを敵に回すからね。十六弥くん怒らすと怖いぞ〜」
「一番敵に回したくない相手だな」
色々な業界に存在しているTOKIWAだからそこ、どの業界もTOKIWAの反感など買いたいわけが無い。
流石に一般人が勝手に撮影した写真などまでは規制しきれないが、そこは色々な手を使ってどうにでも出来る。なんてったって俺達は世界のTOKIWAですから。
こうやって今も嵐ちゃんとの生活を周囲に干渉されること無く過ごせているのもその恩恵だ。
「やっぱ今日出かけない?カレンちゃんに貰った服まだ着てないのあるから着てデートしたい!」
「俺の服も選んでくれるか?」
「勿論!」
なんだか無性に俺の大好きな嵐ちゃんを見せびらかしたい気分になった。お気に入りのパン屋に行って、最近仲良くなったオーナーのいるコーヒースタンドでコーヒーを買って散歩をしよう。俺はカフェオレだけど。
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