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第3話
午後一時。
地下室から引き上げた僕達は、全身消毒の後防塵服を脱ぎ、手洗いうがい等を済ませてから、施設内の食堂へぞろぞろと向かう。
広い食堂には、既に警備員や事務関係の内勤者が、長テーブルに付いて各々食事を摂っている。空いている席といえば、前方──受け渡し口の前辺り。
「……あ、いや。俺……食えないっす」
「俺も」
「ヤバいですって……」
受け取ったランチを前に、青い顔をした新人達が、口元を押さえて呻く。……まぁ、無理もないか。
さっきまで化け物の死骸を切り刻んで、外に運び出していたんだから。
……開始早々、戦力外になってはいたけど。
そんな新人達を尻目に、僕は茶碗と箸を持つ。
おかずの皿には、添え物の野菜サラダにサイコロステーキ。
その肉片を箸の先で摘まみ、口の中に放り込んだ。
「……ぅえっ、」
「い、伊江さん……よく食えますね……!」
僕に気付いた新人が、青い顔をしたまま口元に手を当てる。まるで酷いものを見たかのよう。
「……」
当たり前だ。
ゆりかご内に囚われていた頃、僕は生きる為によく解らない肉片を焼いて食べたんだから。
食べなきゃ、死ぬ。──それは今でも変わらない。
奥歯に力を込め、硬い肉片をすり潰す。中まで良く焼かれていて良かった。流石に生は、僕でもキツイ。
汚らしい嗚咽音を聞かされる中、二つ目の肉片を摘まみ上げた時……だった。
──バンッ
左隣に座る先輩が、両手で勢いよくテーブルを叩く。
それに驚いた新人達が、一斉に其方へと視線を向けた。
「……よぉし。
戦力にならねぇ奴と、飯を食わねぇ奴は、今夜から地下室で、化け物と添い寝でもして貰うぞ」
「はぁ?!……冗談じゃねぇっすよ!」
先輩の台詞に、直ぐさま新人達が口答えをする。青い顔を更に青くし、何処となく窶 れて老けた様にも見える。
そんな新人達に、先輩はいつもの優しいスマイルを浮かべて見せた。
「安心しろ。翌朝には、モーニングコーヒーを二つ用意して持ってってやる。それも、とびきり美味いヤツをな」
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