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第7話

端に並ぶ箱に積み上げた、バラバラの死骸。 床の見える場所にシェルターを作り、各々消毒した上で、朝受け取った弁当を広げる。 「……」 塊肉にケチをつけたせいか。 中身は鮭の切り身が乗った、のり弁当だった。 「何だろうな。……この形態も、食欲失せるわ」 香取が、切り身を割り箸で摘み上げながらぼやく。 切り刻んでいたのが巨大なカマキリだとはいえ、確かにグロテスクに感じてならない。 「……」 「……ぅえっ、」 解したそれを黙々と口に運べば、僕を見る新人の一人が、目の前で嘔吐く。 「……」 僕だって。 本当なら食べたくない。 でも、この仕事はそういう仕事だ。 覚悟が無いなら、さっさと辞めてしまえ……! 苛立ちに任せて、ご飯を口いっぱいに掻き込む。 その食べっぷりを見た先輩が、残り少なくなっていたペットボトルのお茶を、まだ殆ど入っている先輩のものと取り替えてくれる。 「……伊江。もっとゆっくり食え」 「……」 「な……」 僕に流し目をした先輩が、目を細める。 「……」 驚いた顔で先輩を見れば、残り少ない僕の飲みかけを、グイッと飲んだ。 「………はい」 午後の作業は、結構堪える。 既に汗だくで気持ち悪いのと、熱いのと、適度な疲労感とお腹が満たされて眠いのとで、単調な作業中に頭がボーッとしてくる。 だからなのか。……あの忌まわしい記憶が、まるで昨日の事の様に思い出される。 ──はぁ、はぁ、 苦しい……息が、出来ない…… ……苦しい…… 化け物に食い千切られ、それでも死ねなくて……文字通りの地獄絵図と化したあの光景は、あまりにも強烈で…… ……ごめんね…… ナツネくん……ごめん…… 滝のように流れる汗。 頭の芯に痛みが走れば、張り詰めていた糸が切れるように、フッと身体から力が抜け落ちる。 ──トサッ 熱くて、熱くて…… ……苦しい…… こんな状況の中で、ナツネくんは……ずっと…… 「………おい、伊江!」 遠くから聞こえる、くぐもった声。 でももう、起き上がってそれに答える気力は……もう無い……

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