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第10話
作業三日目──
当初、解体して運び出した死骸を、焼却処分する予定だったが、二日目にして急遽埋め立てに変更。
死骸の入った箱にモルタルを流し込み、
重機で地中深く掘られたそこに放り込む。
その為、ゆりかご地下室を掘り起こした作業員が再び集結し、平行してその作業が始まった。
しかし、僕達の作業は変わらない。
地下室内で、朝から晩まで同じ事の繰り返し。
「……はぁ、シンドイわ」
昨日、設置されたらしい。
作業員は本舎に入る前、その裏口にある除菌室で着替える事になっていたが、その前に、掘っ立て小屋で全ての服を脱ぎ、シャワールームで身体を綺麗に洗浄してから裏口へと繋がるビニールシート状の通路を通る事になった。
作業員は、特殊清掃の僕達と埋立作業員。
一度に十数人が、入って直ぐの脱衣所に詰め込まれる。
……まるで、分別されたユダヤ人の気分。
全員が裸になり、狭いシャワールームへと移動する。壁にあるコックを捻ると、上に取りつけた幾つかのシャワーヘッドから水が噴射する。
備え付けの石鹸を使い、全身くまなく綺麗に洗い流す。
感染したかもしれない僕達は、人間扱いなんてされない。ここに、人権なんてものはない。
「……なぁ、お前知ってるか?」
重機作業員の一人が口を開く。
「さっきの部屋とここ、監視カメラが付いてんだってよ」
「……ハァ? 何だそりゃ」
それに食い付いたのは、男に話し掛けられた新人の香取。
「俺らの真っ裸、覗き見てんのかよ。悪趣味だな。……ここでストリップショーでもやれってのかよ」
「……全員がきちんと綺麗に洗ってるか、チェックをしているそうだ」
「はぁ……? 何だそりゃ」
「──死んだからだよ」
ザザァ──ッ
「……」
ここにいる全員が、一斉に重機の男に視線を向ける。
神妙な顔つきで。
「高熱で倒れた特殊部隊の奴が、今朝になって……死んだ。
奴の遺体をこっそり処理してくれと、頼まれたんだ。………だから、お前等が解体した化け物の死骸の隙間に詰め込んで、そこにモルタルを流し込んで固めた。
──つまり、隠滅だよ」
ザァ──、
無情にも、シャワーの音だけがやけに耳に付く。
誰もが動きを止め、息を飲む。
「……俺は、知ってるぜ」
その空気を真っ先に破ったのは、僕の直ぐ近くにいた……先輩。
「この化け物が突然現れてから、沢山の人間が死んだ。
だけどその半数は、食われた事によるものなんかじゃねぇ」
「──!」
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