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第12話
部屋に戻ると、見知らぬ荷物が置かれていた。
急遽、今夜から埋立作業員との相部屋らしい。
「……」
「大丈夫か?」
心配した先輩が、僕の顔を覗き込む。
「……はい。色々、すみません」
「いや、……その、あれだ。
知らねぇ奴と同室になって、って意味だ」
「……」
言いながら、先輩が視線を逸らす。
ずっと使われていなかった、もう一つのベッド。そのシーツが少し依れて見えるのは、同室となった作業員が仮眠でも取ったんだろうか。
「……お前、自覚ねぇかもしれねぇが。……女、みてぇに……可愛いからな」
「………」
いくら女みたいだって言われたって、──所詮、僕は男だ。
本物の女性には、敵わない。
ふと脳裏を過ったのは、カズと見知らぬ女性。
今頃二人は身体を寄せ合って、仲睦まじく過ごしているんだろうか。
「もし、お前が良いっていうなら……上と掛け合って、俺と同室にさせる」
「……」
「………手は、出さねぇから」
答えない僕に、先輩が念押しする。
心配して言ってくれているんだろう。
解ってる。僕も、先輩と一緒の方がいい。
でも……
「大丈夫、です。作業員の皆さん、いい人そうだし……」
間違いは、起こしたくない。
このままだと、先輩の優しさに引きずり込まれて、溺れてしまいそうになる。
……そんなの、許されない。カズを裏切りたくないし、これ以上先輩に迷惑を掛けたくない。
目を伏せそう答えた僕に、先輩が軽く溜め息をつく。
「………そうか。じゃあ、……もし何かあったら、直ぐ俺に言えよ」
「はい……」
背を向け、片手を軽く上げた先輩が出て行く。
「………」
先輩は、手を出さないって言ってくれた。
けど、僕の方から破ってしまいそうで。
駄目……
そんなのは、絶対──
何度も自分に言い聞かせるのに、心は淋しくて。
記憶を辿り、最後にカズと結ばれた夜の記憶を掘り起こそうとする。
ベッドに踞り、この身を抱きながら。
何度も、何度も……
……熱い。
熱い、熱い、熱い……
……あ、……ゃ、ん……っ、
「………っ、はぁ……!」
溺れた身体を浮上させ、水面から顔を出して必死に息継ぎをする。
……何故溺れてるのか。身体か火照っているのかさえ解らずに。
身体中に這う、生暖かな滑り。
……何、これ……
汗……、じゃない……
「……ン、……んぅ、ぁ……っ……!」
……なん、で……
抑えようとしてるのに……声が……
……やだ……
隣のベッドには、同室になった作業員がいるかもしれないのに……
……なん、で……
カズに触られている感覚が、こんなにもリアルに感じて……
「──あ″ぁっ、!」
後孔に、熱くて滑る何かが這い……
先の尖ったモノが、そのまま──僕のナカに入って………
「………っ、!! あ″ぁぁ、……ぁんっ、!」
その質量と圧に、一瞬息が止まる。
このリアルな感覚は……なに……
カズとの情事を思い出したから……?
先輩に、甘えたいって思ったから……?
「………せ、んぱ………ッ、」
……熱い……
助けて……
……もう、……だ、め………
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