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第13話
朝起きると、びっしょりと汗をかいていた。
ベトベトして……何だか気持ち悪い。
ふと、隣のベッドに目を移す。
魘 された僕は迷惑じゃなかったかな、と思って。
……だけど。
「……」
綺麗に掛け布団が畳まれ、使用された痕跡はあるものの……そこには既に誰も居なかった。
作業四日目──
ようやく、フロアに散乱していた死骸が片付こうとしていた。
この奥に、女王と卵のあった密室がある。少しだけ開かれたように見えるドア。……その向こう側は、一体どんな光景なのか。
「……もう少しだな」
「はい──」
手を止めて、其方をじっと見ていたからだろう。作業をしながら先輩が声を掛けてくる。
……もう少しだ。
もう少しで、ナツネくんがいた場所に行ける。
新人の三人は、怒りの矛先を化け物に向けていた。初日では考えられない程、無心に死骸を切り刻んでいく。
残り三体。他とは比べ物にならない程……デカい。
先輩が、先陣切ってその巨大カマキリに上る。その後に続いて、新人の一人……狩野が上った。
「──なぁ」
香取が、僕ともう一人に話し掛ける。
「これ、何だ……?」
カマキリの喉元に空いた、人が通れる位の穴。
「──!」
ナツネくん……!!
頭の中で、何かが弾ける。
堪らず、奥の部屋へと走り出す。
気持ちだけが急いて、足が縺れて、上手く走れない。……もどかしい……
……ナツネくん……ナツネくん……
「──伊江……っ、!」
化け物の反対側から器用に滑り降りた先輩が、ドアノブを掴もうとする僕の二の腕を強く引っ張った。
「勝手な行動すんじゃねぇ……!!」
「………っ、!」
真剣な、目……
目尻が吊り上がり、眉間に皺を寄せ、責任者としての顔で僕に怒声を浴びせた。
「死にてぇのか、っ……!」
──そうだ。僕は……僕は……
瞼が持ち上がっていくのを感じる。
冷静な自分と、そうでない自分がせめぎ合い、僕の視線が大きく揺れる。
「………伊江。お前はそっちで、頭冷やせ」
「……」
僕の肩をポンと叩き、先輩が大きな溜め息をつく。
「──後で、話がある」
僕に聞こえるか聞こえないかの声でそう言って、先輩がスッと離れた。
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