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第一章・3

「迷っているね、お前さん」 「何だよ、婆様か」  まだ駆け出しのころから、時折言葉を交わしている辻占いの老婆。  占いなんぞ信じているわけではないが、彼女のアドバイスは常に的確だ。  今度もまた、ジンガラに有無を言わさずタロットカードを混ぜあわせ始めた。  小さな折り畳み式の椅子に腰かけると、その重みでみしりと鳴った。  何度か踏みつぶしてしまった事のあるその華奢な椅子に気を使いながら老婆の手元をうかがっていると、一枚、また一枚とカードが開かれてゆく。 「北へお行き。いい出会いがあるだろうよ」 「いい出会い? そいつぁいい。金持ちのパトロンでも引っかかるのかねぇ?」  無精髭を片手で撫でながら、ジンガラは明るい声をあげた。金はいくらあっても困ることはない。 「いや、年貢の納め時、ということさ」 「何ィ?」  ついに、とっ捕まるってぇことか!?   ドラッグか? 食い逃げか? 最近は、どちらともやってないはずだが? 「生涯の伴侶が、見つかるだろうよ」  老婆の言葉に、ジンガラはぷぅと吹き出し、大声で笑った。  伴侶。  生涯の伴侶、だと!?

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