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第一章・4
「婆様もヤキが回ったな。俺様に限って、そんな事は天地がひっくり返ってもありえねえ」
女や男と付き合うことはある。だが、それは全て遊びの範疇だ。
お互いそいつは承知の上で、恋人ごっこをしばらく楽しむ。
それ以上でもそれ以下でもない。
恋なんかに真剣になっちまってはおしまいだ。何のメリットもない。
「ようするに、火遊びはすんなってことね。肝に銘じておくよ」
ジンガラは軽い声でそう言うと、紙幣を一枚、老婆のタロットカードの上にパラリと置いた。
辻占いには払いすぎるくらいの金額だが、このところのヒットで懐はあったかい。
老婆と別れ、再びぶらりと歩き始めた。
気にしないつもりなのに、やけに引っかかるあの言葉。
『生涯の伴侶が、見つかるだろうよ』
ありえねぇ、ともう一度首を振った。
いつも傍にいて欲しい人間なんて、いるわけない。そんなもの、煩わしいだけの代物だ。
恋人と別れる時だって、大抵原因はそれだ。
あれやこれやと束縛してくる。
どこにいたのか、だの、誰と会ってたのか、だのと問い詰めてくる。
あげくに結婚をちらつかせてくる。
付き合うのだって、こちらからぞっこん惚れ込んで、ということはまずない。
それとなく匂わせてやるとあちらの方から言い寄ってくるか、一発ヤってそのままずるずるだとか、そんな関係だ。
それに、女……だけでなく、男とも寝たことはあるが、これまで相性が抜群にイイ相手などに巡り合ったためしがない。
いくら一つになっても、どこか感じる違和感。
身も心も溶け合うような、そんな感覚など味わったことがない。
結局は、パートナーなど性欲のはけ口でしかないのだ。
それでいい、と思っている。
それでもいい、と感じている。
俺様は、俺様。
自分が一番かわいいのだ。
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