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第一章・5

 ある日、パッサカリアは気になる噂を耳にした。 『外国から流れてきた男が、今まで聴いたこともないような音楽を奏でるらしい』  聴いたこともないような音楽、とは。  パッサカリアは、非常に興味を持った。  ぜひ、その男の音楽を聴いてみたい。  パッサカリアは父王に、その男を宮殿に招くよう頼んでみた。  可愛いパッサカリアの願いなら、きかないわけにはいかない。  国王はさっそく使いの者を遣し、その男・ジンガラに王宮でパッサカリアのために演奏をするよう命じた。  だがしかし。 『俺様のライブは、お城みてえな堅っ苦しい場所には似合わねえぜ』  何ということだ。  ジンガラは、王の命令をきかないのだ。  国王は、かんかんに怒った。 「あんな無作法な男の音楽など、聴くに値しない!」  国王は宮殿にジンガラを呼ぶことはやめて、いつものように管弦楽だのピアノだのの演奏をパッサカリアに聴かせた。  美しい調べに耳を傾けながらも、パッサカリアの頭の中はジンガラへの興味でいっぱいだった。  聴くなと言われれば、なおのこと聴いてみたくなる。  ある日とうとうパッサカリアはこっそり宮殿を抜け出し、街のライブハウスへ忍び込んだ。

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