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第一章・9
まだ頭の中に、心の中にジンガラの音楽が響いてる……。
そう感じながらそっと眼を開くと、パッサカリアは硬いソファに横になっていた。
身じろぐと、体にかけられていた重い皮の上着が動き、どさりと床に落ちた。
「あ? 気がついた?」
その音に振り向いた男の顔は……。
(ジンガラ! わぁ、本物!?)
彼が、近寄ってくる。パッサカリアの胸は、どきどきと高鳴っていた。
「あぁ、そのまま寝てていいから」
ぎしり、と狭いソファの空いたスペースに腰掛け、ぐっと覗き込んでくるジンガラの顔。
「ん~、可愛いカワイイ♪ 食べちゃいたいくらい、かわい~」
髭だらけの顔で頬擦りされ、ちゅっちゅとキスの雨が降ってくる。
「ひゃ……」
(父上にだって、こんなことされないのに!)
「ぶっ、無礼者!」
必死で圧し掛かってくる顔を手で拒み、逃れようとするパッサカリアをジンガラがさらに押し返してくる。
「俺様のライブに来てたってぇことは、ファンなんだろ~? 二人で、楽しい思い出作ろうぜ」
「んぁ……」
また、キスされた!
あろうことか、今度は舌が伸ばされ、唇を割ってこちらに潜り込んでこようとしている。
「ん~! ん~!」
また気絶してしまいたい、と思ったが、頭には血が昇る一方だ。
唇を塞ぎながら、ジンガラの大きな手が上衣をかき分け滑らかな肌に触れてきた。
「んんんッ!」
「あ、れ……?」
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