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第一章・16
翌日、朝食の席で王は可愛い末の息子の異常に気づいた。
「パッサカリア、どうした? 元気がないな」
「いいえ。何でもありません、父上」
にっこり微笑み、紅茶を口にしたパッサカリア。
だが、それは嘘だ。
秘所の痛みが疼くたび、昨日のことが思い出されて涙がこぼれそうになる。
内緒で城を抜け出し、初対面の男に犯されました、なんて言えるはずもない。
必死で歯を食いしばって凌辱に耐えた、はずだった。
でもだけど。
(最後には、声が漏れてしまった)
昨日の自分の痴態を思い出すと、死にたくなる。
痛くて苦しいだけのはずの責めが、最後には経験したこともないような悦楽に変わってしまうなんて。
『あぁっ! やッ、やッ、んぁああ!』
『おぉう、ようやくイイ声聞かせてくれたね。カワイコちゃん♪』
結局、終いには自らも溺れたのだ。
誰を恨みようもない。自分が悪いのだ。
ジンガラ、最後まで私のことは『カワイコちゃん』で済ませてしまった。
名前を訊こうともしなかった。
彼にとっては、よくあるお楽しみのひとつでしかないのだろう。
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