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第一章・18

「父上、私はフォルツァの元へ参ります」 「パッサカリア!」  小さな国の国王は、愛しい我が子を抱きしめ涙をこぼした。  手放したくない。申し訳ない。でも、どうすることもできない。  (私が我慢さえすれば、丸く収まること)  昨日だって、我慢できた。  今度はその相手がフォルツァになるだけのことだ。 (すでに私は汚れているのだ)  それでよかったら、この体自由にするがいい。  涙を流し身を震わせる父の背を、撫でた。  いつの間に、こんなに小さくなってしまったのか。  この小さな人を、苦しめるわけにはいかない。  この小さな国を、戦火で焼くわけにはいかない。  その日から、パッサカリアは笑わなくなった。  唇をかみ締め、自らの運命を耐えた。

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