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第一章・22

『パッサカリアを笑わせた者には、褒賞をとらせる』  さすがに無抵抗無表情なパッサカリアを苛めることにも飽きてきたフォルツァは、国中に通知を出した。  ただ美しいだけで、にこりともしない、外国からやってきた王子。  彼を笑わせることができれば、してやったりという征服感を味わえるし、そのうえ褒美までもらえれば言うことなしだ。  国中の芸人や噺家、音楽家などがこぞって申し出てきたが、誰一人としてパッサカリアを笑わせることができなかった。  そんなある日、家臣の一人が耳寄りな情報をフォルツァにもたらした。 「外国から流れてきた男が、今まで聴いたこともないような音楽を奏でるらしいのです」  ぴくり、とパッサカリアはその言葉に反応した。  どこかで聞いたような言いまわし。 「それは面白い。さっそく王宮へ連れて来い」 「かしこまりました」  もしかして、と感じたパッサカリアの予感は、翌日にはすぐに確信に変わった。 「申し訳ございません。例の男でございますが『俺様のライブは、お城みてえな堅っ苦しい場所には似合わねえぜ』などと申しておりまして……」 「なんという無礼者だ!」  ジンガラが、この国に来ている。  そう感じた瞬間、パッサカリアにどっと懐かしさがこみ上げてきた。  美しい私の国。  偉大な父上。優しい兄上たち。  そして、美しい音楽に……、一夜限りの恋。  いや、恋ではないだろう、とパッサカリアはあまりに美化されすぎた自分の思い出に、げんなりした。

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