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第一章・26

 人に酔い音に酔い、魔術によってくらくらになったフォルツァの耳に、ジンガラの声が響いてくる。 「いかがだったかな~ぁ? 俺様のライブは。カワイコちゃんは、笑ってくれたかな~ぁ? う~ん、そう。笑ってくれたってねぇ♪ だったら王様、褒美はいただいていくぜ~!?」  バン! と照明が落ちた。  突然の停電に客はざわめいたが、ステージ上の頭蓋骨は相変わらず不気味に光ったままだ。  それが渦を巻いて中央に集まり消えていく様子を見ながら、これも演出のひとつなのだと暗がりの中でも安心感を持っていた。  だが髑髏の渦に飲み込まれて消えてゆくジンガラが、誰かもう一人連れているような影を見た者は、フォルツァひとり。  そしてジンガラが消えると同時に復旧した明かりの下には、自分の隣にいたはずのパッサカリアの姿がどこにも見当たらなかった。

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