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第一章・28
「じゃあ、スウィートルームへ行くか」
ぱちん、とジンガラが指を鳴らした途端、周囲は瞬く間に穏やかな室内に変わった。
宮殿のように豪奢ではないが、居心地は悪くない小奇麗な部屋。ひとつ違和感があるとすれば、大きなベッドが部屋を占めている点だが。
「いい部屋だ。しかし、なぜ寝室なのかな?」
「そりゃあハニー。今からイイコトするからに決まってるだろ~ぅ♪」
「ぃやあぁあ!」
「逃げんなよ、カワイコちゃん」
あっという間にベッドの上に押さえ込まれてしまった。
まったく何て事だ。男はみんなこうなのか。
これでは、フォルツァの時とちっとも変わらないではないか!
「ひとつだけ、お願いがある」
「何なに?」
「名前を……ちゃんと呼んでほしい」
正直、ジンガラが自分の名前を知っているとは思っていなかった。
小さな小さな国の、しかも7番目の末の王子の名前など外国人が知るはずもない。
「いいぜ。パッサカリア」
は、と息を呑んだ。
知っている。
私の名前を知っている。
「惚れた相手の名前くらい、知ってなきゃおかしいだろ?」
「ジンガラ……」
「う~ん! 可愛いかわいいカワイイ♪ パッサカリアぁあ!」
ぐりぐり頬擦りされ、顔中にキスを落とされた。
髭が柔肌に当たって痛い。
思わず笑いながらじたばたしていたら、いつの間にかキスが顔ではなく首筋に移り舌でれろりと舐められた。
「あッ! やぁッ!」
「今更なんだよ。ヤじゃねえだろ?」
「んッ、ん。ふ、ぅうう」
馴れた手つきで、服がたちまち脱がされてゆく。脱がせながら唇で、舌で、歯で、手で、脚で、全身愛撫される。
「うわ。歯形とかキスマークとか、ひでえ。俺が全部消してやっからな」
「あッ、あッ、はぁあ」
「ここ、俺様の部屋だから。他に誰もいねえから、思いっきり啼いていいよん」
「ぃやぁああ」
あと、今夜はちゃあんと用意してあっから、とジンガラの手にはローションがあった。
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