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第二章 アイスクリーム協奏曲

   最後のお客様が帰ってから、40分ほど経っている。  もう夜も遅いし、そろそろ閉店の準備をするかな、と青年はアイスクリームディッシャーを手に取った。  と、その時ドアが開いてウェルカム・ベルの音が鳴った。 「いらっしゃいま……せ」  語尾がつい小さくなったのは、その入ってきた客の風貌に気圧されたからだ。  逆立てた髪に、素肌に身に着けた袖のない革ジャン。  そこから覗く浅黒い腕には、ご丁寧にタトゥーまで施してある。  酔っている風ではないので、暴れられることはないとは思うが、こちらの対応によっては因縁をつけられかねない。  

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