50 / 104

第二章・15

「さて、と」  ジンガラの声に、青年は、は、と我に返った。  そうだった。この人がいるんだった。  あの時はおひとり様だったが、今夜は恋人をお連れなのだ。恥などかかせては大変だ。背筋を伸ばし直して、笑顔を作る。  パッサカリアは初めて入るアイスクリームショップの明るく華やかな店内をめずらしそうに見廻していたが、大きなショーケースを前にして眼を輝かせた。 「わぁ。こんなにたくさん。まるで可愛らしい宝石箱みたいだ」  なんてステキなお客様なんだ!   青年は、この時ほどアイスショップで働いていて嬉しいと感じたことはなかった。  しかし、その前にずいと立ちはだかるのは、あの武骨な男。  まるで美女と野獣だ。  だが次の瞬間、青年は我が眼を疑った。

ともだちにシェアしよう!