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第二章・16
「パッサカリアちゃんはコレ? それともアレ!?」
ジンガラがショーケース前で、必死であれやこれや指さしてウロチョロし始めたのだ。
その後ろで パッサカリアは軽く眼を閉じ首を振っている。
「何で何で!? 絶対お似合いだってば!」
「食べるものに似合うも似合わないもない。私は自分で決めたいんだ」
青年は営業用の真顔のまま、ぶふッ、と吹き出していた。
この強面の男が、こんな華奢な恋人の尻に敷かれてるなんて!
しかし、この美しい人に逆らえる人間なんていやしないだろう。
恐ろしいはずの男に親近感を覚えながら、青年はスプーンに試食用のアイスをすくってパッサカリアに手渡した。
「よろしかったらどうぞ。他の商品も、お気軽にご試食を御申しつけください」
「ありがとう。気が利くね」
期間限定の新商品、レモンマスカルポーネチーズケーキを舐めたパッサカリアは嬉しそうだ。
青年は、ジンガラにも試食品を渡した。前回の時より、ずっとくだけた気持ちで接することができた。
人は、見かけによらないのだ。
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