56 / 104

第三章・2

「捕まえた!」 「きゃッ♪」  さあ、パッサカリア。美しいその顔を、見せておくれ……。  ゆっくりと振り向くパッサカリア……。  ドン!  と、擬音が聞こえたようだった。  振り向いたパッサカリアは、無精鬚の浅黒い男に変わっているのだ! 「きッ、貴様はガンガラ!」  愛するパッサカリアをかどわかし、連れ去ったと思われる一番の容疑者! 「ざ~んねんでした~♪」  がははは、と高笑いしながら、風船を手にして天高く昇ってゆくジンガラ。  その片腕には、パッサカリアが抱かれている。 「待て! 返せ、戻せ~ッ!」 「王様~バイバ~イ♪」 「おのれ、ガンガラ!」  地団駄踏んで悔しがっていたところで、は、と目が覚めた。  うたた寝をしていたらしい。  柔らかなソファに腰掛け、ゆったりとくつろぐフォルツァの周りには、数名の美女&美少年が。  それぞれで肩をもんだり、足湯を使わせたりしながら、夜伽の指名を待っている。  今夜こそ、この私が。  フォルツァ国王の寵愛を受けることこそ、名誉。  そのような環境に置かれた者たちは、ただ一心にフォルツァのご機嫌をとることに夢中になる。  愛想笑いを浮かべ、身を擦りつけて誘ってくる。

ともだちにシェアしよう!