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第三章・2
「捕まえた!」
「きゃッ♪」
さあ、パッサカリア。美しいその顔を、見せておくれ……。
ゆっくりと振り向くパッサカリア……。
ドン!
と、擬音が聞こえたようだった。
振り向いたパッサカリアは、無精鬚の浅黒い男に変わっているのだ!
「きッ、貴様はガンガラ!」
愛するパッサカリアをかどわかし、連れ去ったと思われる一番の容疑者!
「ざ~んねんでした~♪」
がははは、と高笑いしながら、風船を手にして天高く昇ってゆくジンガラ。
その片腕には、パッサカリアが抱かれている。
「待て! 返せ、戻せ~ッ!」
「王様~バイバ~イ♪」
「おのれ、ガンガラ!」
地団駄踏んで悔しがっていたところで、は、と目が覚めた。
うたた寝をしていたらしい。
柔らかなソファに腰掛け、ゆったりとくつろぐフォルツァの周りには、数名の美女&美少年が。
それぞれで肩をもんだり、足湯を使わせたりしながら、夜伽の指名を待っている。
今夜こそ、この私が。
フォルツァ国王の寵愛を受けることこそ、名誉。
そのような環境に置かれた者たちは、ただ一心にフォルツァのご機嫌をとることに夢中になる。
愛想笑いを浮かべ、身を擦りつけて誘ってくる。
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