66 / 104
第三章・12
「パッサカリア。遊園地といえば、まずメリーゴーラウンドに乗ろうよ♪」
きらきらとにぎやかに飾り立てられた馬や馬車。
軽やかな音楽とともに回るそれに乗るのは気恥ずかしいが、ジンガラはそこをあえて選んだ。
「へっへへ。恥~ずかし~い。ガキみてえ」
「君の頭の中は、子どものままじゃあないか」
「かもね~♪」
愛しいパッサカリアと、無垢な子どもの気持ちとやらを味わってみたかった。
本当の子ども時代には、決して得られなかったものへの憧憬。
二人は共に金色の馬車に乗り込み、微笑みあった。
一方、フォルツァは。
「この馬は、我が愛馬サクラショウリ号に似ているな」
二人の乗った馬車の、3台後ろの白馬に跨った。
「俊足のサクラショウリ号で、そのような馬車になどすぐに追い付いてみせるわ!」
そして脇から、麗しいパッサカリアを奪い去るのだ。
くっくっく、と小さく喉で笑うフォルツァの姿が、進行方向と逆向きの席に座ったジンガラの視界にちらりと入った。
ずいぶん妙な奴がいる。
男一人で、メリーゴーラウンド。
しかも、あのへんてこりんな格好。
(ま、野郎一人でこんな遊具に乗るにゃあ、変装も必要だぁな)
ジンガラは、あまり深く考えることなく、ゆっくりと動き出したメリーゴーラウンドに、身をゆだねた。
ともだちにシェアしよう!