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第三章・13
「おぉお♪ 何かすっげぇ! ワクワクしちゃうねぇ~!」
「ジンガラ、あまりはしゃぐとみっともないよ」
楽しそうな笑い声が、フォルツァの耳に入ってきた。
さあ、いざ参らん!
「行け! サクラショウリ号よ!」
フォルツァは、両脚で作り物の白馬の腹を思いきり蹴った。
ところが、一向に馬は駆け出す気配がない。
馬車と馬との距離は相変わらず一定のままで、伸びもしないし縮まりもしない。
「どうした、サクラショウリ号! 駆けんか!」
しきりに体を動かしているフォルツァの様子は、ジンガラの眼にいやでも入ってくる。
「何か、危ねぇ兄ちゃんだな」
「どうかした?」
「いや、何でもないよん」
二人でのんびり、初めてのメリーゴーラウンドを楽しんだ。
ただ、回るだけ。
それだけなのに、どうしてこんなに気持ちが晴れやかになるんだろう。
遊具が止まり降り立った時には、ジンガラもパッサカリアもすっかり遊園地モードにシフトチェンジしていた。
「次、あれに乗ろう! あれ!」
楽しげに歩きだす後ろには、息を切らせたフォルツァの姿が。
「陛下!」
「おのれ……まさか、我が愛馬に裏切られようとは」
「陛下、あとは私ども、いえ、私にお任せください。必ずや、パッサカリア様を取り戻してみせましょう」
「いや! 私のこの手で奪い返さんと気が済まん! 手出しは無用!」
あぁ、と頭を抱える侍従の心痛も、フォルツァには伝わらない。
作戦失敗の予感を濃厚に感じながら、侍従もまた王と共に二人の後を追った。
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