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第三章・14

「次は、あれに乗ってみたいな」  パッサカリアの指した方には、ミニチュアのかわいい自動車が停めてある。 「ゴーカートか。いいねぇ」  二人乗りのチケットを発行し、いざ乗ってみようとすると。 「うぇ。小さすぎて入んねえ」 「君の体が大きすぎるんだよ」  小さなゴーカートの席には、体格のいいジンガラはどうがんばっても入らない。 「私が一人で乗るよ。前から、運転をしてみたかったんだ」  ドライブや買い物で車を出す時には、いつも助手席のパッサカリア。  いつか、ジンガラのように自分でハンドルを切ってみたいと思っていたのだ。 「じゃあ、写真撮ってやるから」  のろのろと走り出したパッサカリアの赤いゴーカートを見失わないよう、ジンガラはコースの外から注意してその姿を見ていた。  あっちへふらふら、こっちへふらふらしていたが、しだいにスピードを上げてすいすいと走り出した。 「おぉう、結構うまいじゃん♪」  免許を取らせて、車を買ってやるのもいいな、とジンガラは思い始めていた。  そうすれば、自分が仕事で一緒にいられない間も、気晴らしに外に出られるだろう。  そんなことを考えていた時、パッサカリアの赤い車の後ろをよたよたと走る黒いゴーカートが目に入ってきた。  何度も止まり、フェンスに激突し、時折バックで走り出すなど奇妙な動きを見せる、黒い車。

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