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第三章・15

「あれは……さっきの危ねぇ兄ちゃんじゃねえか」  後をつけられてるのでは、との思いが、そこでようやくわずかに浮かんできた。  しかし本人が言うのもなんだが、人相の悪い自分と一緒のパッサカリアをナンパしようと考えているとは思えない。 「ま、モテない兄ちゃんが綺麗なパッサカリアと、エア・デートしてるつもりなんだろな」  一周コースを回ってきたパッサカリアが、ジンガラに向けて笑顔で手を振っている。  それに応えて片手を上げ、スマホで写真を撮ってやると、後は猛スピードで爆走していった。 「結構……、走り屋になるかも……」  パッサカリアに置いて行かれた黒いゴーカートは、相変わらず奇妙な動きを取りながらよろよろのろのろと走っていた。  遊園地のクライマックスと言えば、これだろう。  ジンガラとパッサカリアは、ジェットコースターの一番前の席に並んで座り、胸をドキドキさせていた。  ごとん、とひと揺れした後、ゆっくり進みだすジェットコースター。きつい傾斜を、じっくりじっくり昇ってゆく。 「あぁ、もうここで、やっぱり降ります、とか言えないんだよね」 「怖いのかい? ジンガラ」 「怖くはねぇけど、こう、心の準備がまだ」  ごっとん、とコースターが止まった。  一瞬の間をおいて、急激に下へ下へと落ち始めた。 「ぅわぁあ!」  風を切り、唸りをあげて運ばれる体。上へ下へ、右に左にと、翻弄されるままに揺れる体。 「あはは! 楽しい、楽しい! すご~い!」 「あぁあ! 俺ダメ! こういうの、ダメ~ッ!」  きゃっきゃと笑うパッサカリアと、野太い悲鳴を上げるジンガラ。 「パッサカリアちゃん、こういうの好きなんだ!?」 「面白い! ははは!」

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