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第三章・18
は、と意識が戻った時、フォルツァは柔らかく心地よいベッドの中にいた。
傍に座っているのは、麗しのパッサカリア……ではなく、眉をハの字型にさせた心配顔の侍従。
「おぉ、陛下! 気が付かれましたか!?」
「ここは一体」
アポジャトゥーラ内の、ブラヴラ大使館でございます、との返事に、フォルツァは唸った。
「むぅう、致し方あるまい。して、アレはどうなった」
「アレ、と申されますと」
ばふん、と枕を侍従に投げつけ、フォルツァは大声で当り散らした。
「パッサカリアだ! 任せておけ、と申していたではないか。むろん、取り戻したのであろうな!?」
「お言葉ですが陛下、今回は諦めていただきとうございます」
「ならん! 行け! 今すぐにだ! パッサカリアをここへ連れてまいれ!」
「陛下にはこの後、特別にチャーターしたジェット機で本国へお戻りいただきます」
ならんならんと、フォルツァは駄々をこねた。
「お前が行かねば私が行く! 今度こそ、奪い返して見せる!」
ベッドから飛び降りようとするフォルツァを、いつのまにやら周りを取り囲んでいた黒服に抑え込まれた。
「また機会はございます。どうか、今回のところは」
「たわけ! 離せ、離さんか!」
「どうしてもとおっしゃいますなら、私どもにも考えがございます!」
「この私を、脅迫する気か!?」
ふふん、とフォルツァは鼻で笑った。
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