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第四章 緑の幻想曲

 んがッ、と自分が大きく息を吸い込み鳴らしたいびきで眼が覚めた。  もぞりと動いて時計を見ると、5時13分。まだちょっと早い。  隣に眼をやると、パッサカリアは大人しくすやすや眠っている。  起こさないように気を配りながら、ジンガラはそっとベッドを抜け出した。  寝室から出て、リビングのテーブルに置きっぱなしの煙草を手に取り、ベランダへ出る。  早朝の空気は少しひんやりと冷たく、だが清々しい一日の始まりの予感を抱いていた。    朝が待ち遠しい、なんて気持ちを味わう日が来るとは思ってもみなかった。  刹那的に一日一日をやっつけては、爛れた夜を過ごしてきた。  朝が来ても、また同じような事の繰り返しを感じては、げんなりしていた。  傍に居てくれる人ひとりで、こうも人生変わるのか。    先程の、安らかなパッサカリアの寝顔を思いだして、大きく煙を吐いた。  煙草だってそうだ。  今まで、どんな女と、男と付き合おうが自分のスタイルを崩すことはなかった。  寝室だろうがリビングだろうが、吸いたくなったらいくらでも、いつでもどこでも煙を吐いていた。  今は、違う。  タバコの煙や匂いが苦手なパッサカリアのために、吸うのは一人の時だけ。  そして部屋に匂いが籠らないよう、ベランダでしか吸わない。  そんな自分が、嫌いじゃない。

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