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第四章・2
へへへ、と独りで照れながら煙草をふかすうちに、朝の光がだんだん明るさを増してきた。
小鳥も起きだし、さえずりはじめる。
ふと、ベランダに置かれている緑に眼をやった。
仕事上の義理で贈られた、観葉植物やランの鉢植えだ。
瑞々しいうちに捨てることもはばかられたので、ベランダに出しっぱなしで放置していた。
枯れれば枯れたでゴミに出すことが面倒で、そのまま放ったらかしにしていた植物たち。
「あれ?」
その、今にも枯れそうに弱々しかった緑が、活き活きと葉を繁らせ旺盛に伸びている。
どうして、と思ったところに、ベランダのサッシが静かに開いた。
「おはよう。今日は早いね」
寝起きのパッサカリアが、ジンガラの元へやってきた。
珍しい事もあるもんだ。煙草を吸っている時には、滅多に側に来ないのに。
ちゅ、とおはようのキスをした。
「ふふ。ヤニ臭い」
それでも、嫌がる風でもなくパッサカリアは髪をかきあげた。
「もしかして、パッサカリアが水やりとかしてくれた?」
「うん? あぁ、これかい?」
生気を取り戻した観葉植物の葉を撫でて、パッサカリアは少しだけ口を尖らせた。
「みんな、瀕死の重傷だったんだ。枯れるまで知らんぷりだなんて、ジンガラは薄情だな」
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