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第四章・9

   行ってきます、とジンガラはパッサカリアの鼻先にキスをした。  本当は唇にしたかったのだが、彼が胸に抱いた鉢植えが邪魔をして鼻になってしまったのだ。 「すっかり元気になったから、玄関に飾ろうと思って」  そう言って愛おしそうに葉を撫でるパッサカリアの手にあるのは、南方系のつる性植物。  葉は落ち、すっかり枯れていたと思っていたのに、ここまで回復させるとは本当に見事な魔術だ。 「なるべく早く帰るからネ」 「行ってらっしゃい」  ジンガラが出て行った後、パッサカリアは鉢植えを玄関に飾りドアにロックをかけた。  一人で留守番をするのは退屈だったが、今はグリーンがある。  彼らに語りかけていれば寂しくはないし、それだけ育ってくれるので張合いもある。  パッサカリアは、そろそろ追肥の用意をしようと、ネットで園芸店のサイトを開いて眺めていた。  そこへ、チャイムの音が。 『こんにちは。宅配便でーす』 「宅配便?」  防犯カメラの映し出す画面には、確かに宅配便の制服を着た男が、観葉植物を抱えて立っている。  またジンガラへ、仕事のパートナーから贈り物が届いたのか。  新しい友達が増える、とパッサカリアは喜んでドアを開けた。

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