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第四章・10

「ごくろうさま」 「ありがとうございます。ここに、サインを」  伝票にサインしようとパッサカリアが男からペンを受け取ったとたん、凄い力で手首を掴まれた。  すぐさま、身を潜めていたもう一人の男が、サイレンサー付きの銃を突き付けてくる。 「君たちは!?」 「静かにしていれば、危害は加えない」  穏やかな、だが凄みのある声で手首をつかんだ男が手錠を取り出す。  ショックで動けないパッサカリアの手首に手錠がかけられようとしたその時、あらぬ方向から激しい打撃を受け、男はそれを取り落とした。 「何ッ!?」  ジンガラが家を出たことは確認済みだが!?   しかし次の瞬間、男たちは我が目を疑った。  玄関に飾られていた観葉植物から長いつるが何本も異様に伸びだし、こちらに向かって這い出してきているのだ。  いつの間にか足首に巻かれたつるが激しく踊り、男らは足を取られて派手にひっくり返った。  しかしそこで植物は情け容赦なく、首にまで這い伸びてくる。首を絞められては大変と、男たちは逃れようとしたが情け容赦なく締め付けてくる。 「たッ、助けてくれ!」 「何だ、これは!」  男たち以上に驚いているのは、パッサカリアだった。  まさか、植物がこんな短時間に急成長を!? 「いけない。やめなさい!」  パッサカリアの叫びに、植物はひるんだようだった。わずかな隙を突いて男たちは脱出し、命からがら逃げ出して行った。  男たちを撃退した植物のつるは、あっという間に弱弱しく縮んでゆく。  先端から変色し、見る間に枯れてゆく。 「私を守るために、こんな」    パッサカリアは枯れゆく植物を抱きしめ、静かに涙を流した。

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