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第四章・15
パッサカリアは、不安より興味の方が大きかった。
それに、ジンガラが仕事の時はひとりマンションで留守番も、もう嫌だった。
植物たちが傍にいてくれれば寂しくはないが、また妙な誘拐犯がやってきて私を守るために枯れてしまうのもたくさんだ。
「やってみる。私で良ければ」
イエス! とシャルフが指を慣らし、マルカートの顔にはホッとした緩みが現れた。
あのジンガラが、ラブソングの新曲を!
これは話題になる。
資金繰りや広報、売り込みは、マルカートに任せれば大丈夫だ。
曲作りは、これでも一流のドラマーであるシャルフと細部を詰めて行けばOK。
問題は、パッサカリアだったが……。
「すごいよ、パッサカリアちゃん! 天才! 最高!」
「お風呂で時々歌ってるだけだよ」
その歌声を聞いた三人は、仰天した。
天使の歌声とは、このようなものを指して言うに違いない。
おまけに、初見にもかかわらず、譜面の細かい指示までちゃんと拾って歌っている。
「パッサカリアは、以前音楽活動をやっていたのか?」
そんなマルカートの質問に、パッサカリアは、ちょっとだけ、と答えるにとどめた。
幼い頃から音楽は大好きだった。
祖国の王宮にいた頃は、著名な音楽家に指導してもらったこともある。声楽、器楽、舞踊。どれも一通りはこなせるのだ。
バックでスキャットだけでは勿体ない。せっかくだから、デュエット形式で互いに語り合うように歌えばどうかとのシャルフの提案に、ジンガラも大いに張り切った。
顔が出て有名になってしまえば、フォルツァもおいそれと手出しはできないだろう。
(パッサカリアも元気になったみたいだし、いいコトづくめ♪)
プロジェクトは着々と進んでいったが、ある日奇妙な出来事が起きた。
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