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第四章・17
「これは一体……」
収録の様子を伺いに来ていたマルカートも、目を丸くしている。
まさか、とジンガラはパッサカリアの方を見た。
彼は口を手で押さえ、どうしていいか解からない、といった表情をしている。
「ね、パッサカリア。Fからもう一度、歌ってみて」
おずおずと歌い始めたパッサカリア。
彼の歌声に応えるかのように花々は大きく開き、スタジオ中が甘い香りでいっぱいになった。
「やっぱり」
ジンガラは確信した。
パッサカリアの魔術が歌に乗って、このドラセナに刺激を与えているのだ。
「凄い……」
シャルフもそのことに気づき、パッサカリアとドラセナを交互に見ている。
「人を癒し、緑をはぐくむ歌声か。これはいいセールスポイントになる」
マルカートは忙しくメモをとり、スマホで花を咲かせたドラセナを撮影している。
パッサカリアだけが、不安そうな顔でうつむいていた。
「大丈夫だって。素敵な魔術じゃない? 怖いことなんか、ないって」
ジンガラはそんなパッサカリアの肩を抱き、そっと頬にキスをした。
パッサカリアの顔は、ようやくわずかに緩んだようだった。
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