98 / 104

第四章・23

「あれ!? パッサカリアちゃん、大丈夫!?」 「よかった……。ありがとう、ジンガラ。ありがと……」  後はもう、涙声で聞こえなくなってしまった。 「おぉ、よしよし。言ったろ? 絶対パッサカリアを、余所にやったりしないって」  半ば腰が抜けたように心もとないパッサカリアを、ジンガラはえいと横抱きした。 「や! ちょっと!」 「へへへ。王子様をお守りいたしました~♪」  もう、と照れながらも、まんざらでない表情のパッサカリア。  そのまま部屋に入ると、明かりを付けようとするジンガラの手を、そっと押さえた。 「ね、ジンガラ」 「何?」 「……抱いて」  へ? とジンガラは耳を疑った。  まさかまさかまさか、パッサカリアの方からおねだりコールがかかるとは! 「今、何て言った!?」 「何度も言わせないで」  恥じらうパッサカリアが可愛い。  もう、あんな事やこんな事してやりたいくらい、可愛くて仕方がない。  ジンガラはパッサカリアを抱えたまま、足でどんどんドアを蹴破りながら寝室へ直行した。

ともだちにシェアしよう!