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【6】 斜め上の回答。
「何か言ってくれ。」
縋るような情けない声しか出てこなかった。
「お前のこと大事にするよ。俺とお前の付き合いだ。お前だって俺と一緒にいて楽しいだろ?なぁ。春日…」
許しを乞うような、そんな声だった。
懇願だったが、しかし自信はあった。
何度も脳内で繰り返した告白のシミュレーション。
振られる可能性は考えていなかった。
春日が少なからずとも兄崎自身に好意を抱いていることは分かっていたからだ。
そうでなければ、その場の雰囲気だけで同性相手にキスなど許すはずがない。
あの秋の放課後の出来事を思い返し、自らを勇気づけた。
春日が茫然としたまま箸をおろす。
そして、小さく「わかった」と頷いた。
「…分かった。お試し期間を設けて良いなら付き合うか。」
鈍器で頭を殴られるような衝撃。
斜め上の回答。
「は?」
お試し? 何それ旨いの?
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