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【5】知ってんだろうがこん畜生
「…は?なんて?」
「結婚だ春日。」
「いや、待てお前。いろいろ突っ込みどころ多すぎだろ」
「確かにまだ年齢的にも無理だ。じゃぁ、結婚前提で付き合おう。そんで一緒に住もうぜ」
「おいこら何言ってんだよ馬鹿。自分で言うのもあれだけど、そんなに旨い飯でもねぇだろ、これは。」
「誰もお前の飯が毎日食いたいから結婚しようとか言ってねぇぞ。そうじゃないんだ。春日。お前が好きだ。好きだから一緒に居たいんだ。」
「ちょっ!!何言ってんだ馬鹿。待て待て落ち着け。お前腹減り過ぎて可笑しくなってんだよ。そんなに俺の飯が旨いのか?お前の味覚はどうなってるんだ?」
春日の混乱に比例し兄崎は焦っていた。
「ざけんな。こんな手抜き料理で俺の心が動くか。絶対ぇ無いから。」
「あんだと、コラァ!」
「中学の時からずっと好きなんだ。知ってんだろうがこん畜生。」
「知らねぇよ馬鹿。」
「だからお前が好きだなんだよ。恋人になってほしい。」
春日は不揃いに刻んだキャベツと肉を箸に挟んだままポカンとした表情で俺を見つめ返す。
かけすぎたソースが、皿の上に滴り落ちている。
やはり、飯は俺が作ろう。こう見えて料理は得意だ。
沈黙が徐々に兄崎の脳を冷却していく。
改めて何故このタイミングなんだと自分で突っ込みを入れてしまったほど、色気もへったくれもない、スマートさのかけらも無い告白だ。
全身が早鐘を打つ心臓になったみたいで、苦しい。
頭がくらくらしてくる。
春日、何か言ってくれよ。
掠れた声が喉を這いあがった。
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