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【7】そうくるのか

「お前の事は嫌いじゃないけど、いきなり恋人と言われても困る。」 たしかに彼の表情は戸惑っている。 下手なことは言わないで、焦れる気持ちを押さえつけて慎重に次の言葉を待つ。 「本音を言わせてもらえば、どうして良いか分からない。友達として付き合っていた相手から、恋人として付き合って欲しいとか言われても困る。」 春日にしては珍しく不明瞭な声。 それでも、必死に答えようとしてくれる。 やはり好きだと思った。 「お前の事は…好きだと思う。でも恋愛かどうか正直分からない。お前に嫌悪はわかないから、その、付き合えるかもしれないし、もしかしたら駄目かもしれない。だからお試し期間を設けたい。それで、自分の気持ちを見極めたい。勝手な事を言ってると思うけど、駄目なら…」 「駄目じゃない。駄目じゃないよ。友達だった相手にいきなりそういわれても困るよね。うん。恋人として付き合えるかお試し期間設けよう。真剣に考えてくれて出した答えだ。嬉しいよ春日。お前は賢いな!」 お試し期間を設けられたことには、少々面食らう。 そうくるのか、春日。 しかし正式に付き合える自信はあったから、笑顔で頷いた。 同性の友人からいきなり告白されたのだ。 手をつなぐ程度の相手からいきなりキス以上出来る相手に昇格できるかと言われれば面食らうだろう。 春日は慎重な男だ。 流されやすいと言っても軽い気持ちで考えて、分かりましたと躊躇いなく頷くような男ではない。 それに全く可能性が無ければこんなお試し期間など設けて、相手に期待を持たせる様な性格でもない。

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